「いじめ」「お通夜」の設計審査を回避するには「3秒ルール」を押さえろ!:甚さんの「コミュニケプレゼン」大特訓(7)(2/2 ページ)
ちくちく責められてばかりの「いじめ」、みんなだんまりの「お通夜」。そんな設計審査を回避する手掛かりは、「3秒ルール」にあった。
それが、“コミュニケーションを取らせない”ための「3秒ルール」「3秒+S」というスキルでした。簡単な前者の「3秒ルール」とは、「質問の後、すぐに回答するのではなく、3秒以上待って回答しなさい」「3秒以上、よく考えて回答しなさい」ということです(★)。
記者の質問後、3秒間隔でポンポンとリズミカルに返事が返ってくるということは、質問者にとって何よりも心地良いコミュニケーションのリズムです。つまり、この心理学者はそのリズムを壊すこと(あえてコミュニケーションを円滑にしない)が最適なマスコミ対策と考えたのです。
今回の説明は、いつものような「円滑なコミュニケーション」ではなく、「コミュニケーションを取らせないスキル」についてなんですね。念のため、迷わないように後者のことには★(黒星)を付けとくわ。
力士の話の後に、黒星って何か嫌だね……。
もー何でもいいじゃないですか!
まず人間同士の会話って、3秒以内にやりとりがないと、イラつくんだよ。1秒以内だっていう江戸っ子もいっぱいいるぜぃ。
さらなるスキルは、前述した「3秒+S」です(★)。Sに正数を代入します。例えば以下のようになります。
- S1=2で、S=5秒後に答える(★)。
- S2=−5で、S=−2秒に、つまり、相手が話し中に答える(★)。
2のことは、最近の若い人は「かぶせる」「食い気味」というのかもしれません(★)。
それでは、良君とエリカちゃんに実践してもらいましょう。まずは、円滑なコミュニケーションが取れてしまう場合の図1です。
次は高等テクニックの「3+S」です。S1=2を代入して、S=5秒後の場合の図2です(★)。
この手のタイプの男性は、チョー苦手ですね。
ちょ、ちょっと待ってよ! これはあくまで演技なんだから!
いい演技だぁ。まるで演技とは思えん!
このタイプについて、筆者も大変困惑しています。それは、国内のセミナーの時ですが、「××さん、この場合は、どのようなトラブルが想定されますか?」とお聞きします。すると、何も返事がありません。筆者は、重ねて「××さぁ〜〜ん!今日はご出席ですか?」というと、初めて「ハイ!」と答えが返ってきます。
筆者は、もう一度、「この場合は、どのようなトラブルが想定されますか?」とお聞きします。再び、無言です。ただ、自分なりに一生懸命に考えているのだと思うので、「では、次の人」とはいえません。そして、いつまでも「無言」……。非常に困っています(★)。
ところが不思議です。女性技術者と隣国の技術者で、このようなタイプはあまり見掛けません。やはり、技術者には、「技術者向けコミュニケプレゼンスキルアップ」が必要である体験上思います。
そういえば、「黙秘権行使」とは、コミュニケーションを取らせない最高の技術だと思います(★)。
最後は、S2=−5で、S=−2秒に、つまり、相手が話し中に答えてしまう図3を見てみましょう(★)。
「3秒+S」のSにS2=−5を代入して、S=−2秒に、つまり、相手が話し中に答えるという意味です。最近の若い人は「かぶった」というのかもしれません。
これは、「無言」や「黙秘権」より穏やかですが、やはり、コミュニケーションを取らせない高等技術です(★)。なんといっても、相手の話を聞かないのですから……。
甚さん、分かりましたよ〜。「いじめ」「お通夜」の設計審査を回避するには、「3秒ルール」がカギなんですね!
おぉ、そうよ! 「いじめ」なら「3秒以上」、「お通夜」なら「3秒以内」だ。さっきもゆったけどよぉ、最近は3秒も待てねぇヤツらが多いからよぉ、「1秒ルール」もあり、かもな?
ちくちく責められてばかりの「いじめ」であれば「3秒+S」でリズムを壊す、みんなだんまりの「お通夜」なら「3秒以内」でテンポよくコミュニケーションを取るようにしましょう。
これって、面接試験の面談でも同じですよね。今年こそ、あんな低レベルな会社は、「3秒ルール」で辞めてやるぅ〜♪
えー! もおー! またそれ〜!
筆者は設計コンサルタントとして多くの企業を訪問してきました。決して少なくない企業の設計審査が、「いじめ」「お通夜」に変ぼうしています。
その原因は以下の3つです。
- 1−1:設計書がない説明会
- 2−1:技術者向けコミュニケプレゼンスキルが低下
- 3−1:管理職が設計審査ができない
これらの対応策は、以下です。
- 1−2:甚さんの「設計分析大特訓」で対策済み
- 2−2:甚さんの「コミュニケプレゼン大特訓」(本連載)で対策中
- 3−2:今後の連載で予定
では、またお会いしましょう!
Profile
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会、埼玉県技術士。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)をはじめとする多数の書籍を執筆。
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