革新的原価低減に必要な“ものの見方と考え方”〔中編〕:実践! IE:磐石モノづくりの革新的原価低減手法(2)(4/5 ページ)
革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について解説する「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」ですが、今回は第1回に引き続き、この取り組みに必要な“ものの見方と考え方”について解説します。
標準化なくして、改善なし!
改善を進めていく場合に「標準化」は欠かせない要素といえるでしょう。「標準のないところに改善はない」といっても過言ではありません。改善しようとした案が現在の方法と比べて「どの部分がどのくらい良くなるのか」などの改善案の検討や、改善結果の評価にも標準は欠かせません。また、そういう評価が正しく行われなければ改善を行う意欲も生まれません。標準化は、改善を進める前に取り組まなければならない重要なことなのです。
その「標準」を示した「標準書」は、異常を判断する(知る)ツールとしての役割も担っています。
よく活用される主な「標準」として、手順を標準化した「標準書」と、その標準手順を成し遂げる時間を設定した「標準時間」があります。それぞれの内容の説明は後述しますが、標準化の範囲を企業活動のどこまでを対象として広げるかで、その後の改善活動や成果に大きく影響してきます。例えば、従来担当者だけが業務内容や状況を理解していた入荷受付や発送業務なども、新たに標準化対象に加えることで、仕事が「見える」ようになり、飛躍的に業務の生産効率が向上する可能性が出てきます。
また、技能の伝承には標準化が欠かせません。例えば、中小企業の多くで、特定のオペレータだけが技能を占有化している状況が見受けられます。これらのオペレ―タや技術者は優れた能力を持つ人が多いのですが、実際に必要なもの以上に多くのことが熟練技だと思わされている傾向があります。その人に頼りきってしまう状況が、工程全体において他の人が関知できないような状況を生み、人材育成や技能の伝承を大きく阻害しているという実態があります。
標準化を機会に、作業手順を明確にすることで作業内容や問題点などを顕在化し、どの部分に本当に熟練技を必要とするかを検証することを試みてはいかがでしょうか。まずは、熟練技を必要としない部分を標準化して標準書を作成すると同時に、本当に熟練技を必要とするものについては「それを次代に継承するための訓練計画をどうするか」や「熟練技を必要としない方法はないか」など、持続的な活動を行うために知恵を絞る必要があります。
標準化と多能工化の関係
よくいわれる「多能工化」は標準書があって初めて可能となります。業務に対し属人的な要素が多いと「その人に休まれると仕事が止まってしまう」という、企業としてはいびつな状況を招いてしまいます。人の技能を技術へと変換し、次代にその技術を引き継ぐことが重要な課題ではないでしょうか。
熟練技の表現として「カンとコツ」という言葉を耳にします。例えば、「カン」の多くは、実際に物差しを当てなくても、ものの長さが正確に判断できることなどをいいますが、これは、訓練を重ねていくことで養うことができます。また、「コツ」は、一度それを身に付けると、その作業の遂行が継続的に可能になります。例えば一流の体操選手から鉄棒の逆上がりを教わった小学生は、すぐにそのコツを掴み、逆上がりができるようになるといいます。真の熟練技を持つ一流の人は、そのコツを人に教えることもまた一流のはずです。
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