Windows Embedded OSでモーションセンサーデバイスを活用する:モーションセンサーで組み込み機器はどう変わる?(5)(2/3 ページ)
NUI(Natural User Interface)やモーションセンサーデバイスの基礎、組み込み分野での活用事例などを解説してきた本連載もいよいよ最終回。今回は、組み込み機器でモーションセンサーデバイスを活用する際の最適なプラットフォームの1つとして、Windows Embedded OSを紹介する。
PCではなく、Windows Embeddedを選択する理由
組み込み機器は、一般のPCよりも製品ライフサイクルが長く、特定バージョンのOSを使い続けたいといったニーズもあるため、Windows Embedded OSはリリースから15年間の長期供給を保証しています(図4)。
また、Windows Embedded OSのメリットは、長期供給だけではありません。最大の特徴は、PC向けWindows OSには搭載されていない、組み込み機器向けの専用機能(EEF:Embedded Enabling Feature)を利用できる点にあります。組み込み機器向けの専用機能については、後ほど詳しく紹介します。
PC向けWindowsと互換性のあるWindows Embedded OS
Windows Embedded OSには、多くの製品ファミリーがあります。ここでは、Kinectなどのモーションセンサーデバイスを実際に利用できる「Windows Embedded Enterprise」「Windows Embedded Standard」「Windows Embedded Industry/POSReady」に限定して紹介します。
これらの製品ファミリーは、いずれもPC向けWindows OSがベースになっており、Windows OS用のアプリケーションやデバイスドライバをそのまま利用できます。つまり、KinectやPerC、LEAPといった各モーションセンサーデバイスのドライバやアプリケーションをWindows Embedded OS上でも動かせるのです(他にも、Windows Embedded製品ファミリーには「Windows Embedded Server」「Windows Embedded Compact」などがありますが、ここでは割愛します)。
表1は、PC向けWindows OSがベースになっているWindows Embedded OSの一覧です。OSラインアップについては、厳密にはもう少し細かく分類できますが、ここでは分かりやすいように簡略化しています。
製品ファミリー | 特徴 | Windows Embedded OSラインアップ |
---|---|---|
Windows Embedded Enterprise | バイナリレベルでPC向けWindows OSと同じ(フル機能) | ・Windows 7 for Embedded Systems ・Windows 8.1 Pro |
Windows Embedded Standard | コンポーネント化されたWindows OS+組み込み機器向け専用機能 | ・Windows Embedded Standard 7 ・Windows Embedded 8 Standard |
Windows Embedded Industry/POSReady | PC向けWindows OS(フル機能)+組み込み機器向け専用機能 | ・Windows Embedded POSReady 7 ・Windows Embedded 8/8.1 Industry |
表1 PC向けWindowsと互換性のあるWindows Embedded OS |
PC向けとバイナリ互換のWindows Embedded Enterpriseファミリー
Windows Embedded Enterpriseファミリーは、バイナリレベルでPC向けWindows OSと同じものです。組み込み機器向けライセンスが適用されるため供給期間が長く、既にPC向けの販売が終了しているような古いバージョンのOSライセンスも購入することができます。一般的なPC向けのOSライセンスと比べて価格も安く抑えられています。
マイクロソフトから提供される「OPK(OEM Preinstallation Kit)」というインストールディスクでマスターOSイメージを作成し、組み込み機器にOSイメージをインストールします。
組み込み機器としての特定用途に限定されるため、市販されているPCのようにオフィスでの事務用途(汎用作業)などには使えません。
細かなカスタマイズが可能なWindows Embedded Standardファミリー
Windows Embedded Standardファミリーは、専用の開発ツールを使って組み込み機器用のカスタムOSを作成できます。Windowsの豊富な機能がコンポーネント(部品)化され、その中から必要な機能(部品)のみを選択してOSイメージを構築します。例えば、不要な機能を削減したサイズの小さなOSイメージや、組み込み機器に必要な機能だけを搭載した独自のOSイメージを作れます。
OSイメージの開発作業が発生する分、他のWindows Embeddedと比べて開発コストが掛かります。
図5〜8は、Windows Embedded StandardファミリーのOS開発ツールの画面です。画面左にコンポーネントの一覧があり、ここからOSイメージに搭載したいコンポーネントを選択していきます。「カスタムOSを開発する」と聞くとハードルが高く感じられるかもしれませんが、実際にはプログラミングすることなく簡単にOSイメージを構築できます。
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