Windows Embedded OSでモーションセンサーデバイスを活用する:モーションセンサーで組み込み機器はどう変わる?(5)(1/3 ページ)
NUI(Natural User Interface)やモーションセンサーデバイスの基礎、組み込み分野での活用事例などを解説してきた本連載もいよいよ最終回。今回は、組み込み機器でモーションセンサーデバイスを活用する際の最適なプラットフォームの1つとして、Windows Embedded OSを紹介する。
前回の「『どのデバイスが最適か?』――モーションセンサー3機種を徹底比較!!」では、代表的なモーションセンサーデバイスとして、「Kinect for Windows(以下、Kinect)」「Creative Senz3D/Intel Perceptual Computing(以下、PerC)」「LEAP Motion(以下、LEAP)」の3つを紹介しました。
これらのデバイスを利用するには、USBインタフェースでPCと接続する必要がありますが、組み込みシステムの中でモーションセンサーデバイスを活用する場合、どのようなコンピュータ(マシン)を選択すべきでしょうか? 今回は、組み込みシステムでの活用を前提に、「モーションセンサーと組み合わせて利用するマシンの選択」について紹介します。
モーションセンサーデバイスをつなぐターゲットマシンを選ぶ
ここでは「Kinectを使ったデジタルサイネージ向けアプリケーションを開発し、それを店舗に設置する」というシナリオで話を進めていきましょう。
まず、思い付くのが「一般的なWindows PCをターゲットマシンとして利用する」という選択肢ではないでしょうか。ただ、これだとデジタルサイネージ、つまり組み込みシステム特有の課題を解決できません。
例えば「市販のPCで安定した連続稼働が行えるのか」「長期間設置する場合、故障時(数年後)に同じ型のPCを入手できるのか」といった機種選定の課題です。また、「Windows OSをシャットダウンせずに直接電源を落としたい」「ユーザーによる不要な操作を抑制したい」「画面上に表示されるダイアログやメッセージボックスを抑制したい」といった運用上の課題などもあります。
ただ、いくら「課題がある」といわれても、結局、Kinectアプリケーションを動かすには、Windows OSが動作するマシンが必要になります……。では、モーションセンサーデバイスのアプリケーションを実行する、組み込みシステムに最適なターゲットマシンとは一体何でしょうか?
この悩みを解決してくれるのが、Windows Embedded OSです!
Windows Embedded OS とは?
まず、Kinectのハードウェア要件を見てみましょう(図1)。一般的によく知られているPC向けの「Windows 7」と「Windows 8」の他に、Windows Embedded OSである「Windows Embedded Standard 7」や「Windows Embedded POSReady 7」がサポート対象OSとして記載されていることが分かります。
では、このWindows Embedded OSとは、一体どのようなものなのでしょうか?
図1 Kinect for Windowsハードウェア要件(出典:マイクロソフト。『Kinect Sensor Setup, Requirements, Support』より) ※画像クリックで拡大表示
Windows Embedded OSとは、マイクロソフトが組み込み機器向けに提供しているWindows OSのライセンスで、FA機器、医療機器、POS、ATM、デジタルサイネージといった特定用途向けの専用機器に採用されています。PC向けのWindows OSと違い、普段あまり意識することはありませんが、実は駅やコンビニ、ショッピングセンターなど、われわれの生活の身近な場所にも、Windows Embeddedを搭載した組み込み機器がたくさん稼働しています(図2)。
Windows Embedded OSは、PC向けのWindows OSのように一般販売されていません。機器メーカー(OEM)がマイクロソフトと契約し、Windows Embedded OSの販売代理店経由でライセンスを購入した上で、はじめて、組み込み機器にOSをインストールして出荷できるのです。
中にはOEM以外の立場で、「自社で組み込み機器を開発しているわけではないが、モーションセンサーを利用できるマシンとして、Windows Embedded OSを搭載したPCがほしい」というケースもあると思います。そのような場合は、組み込み向けPCを取り扱っているメーカーから、Windows Embedded OSを搭載したPCを購入するのがよいでしょう(図3)。
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