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三菱電機 名古屋製作所、FA機器快進撃の舞台裏FAインタビュー(2/3 ページ)

好調を持続する三菱電機のFA機器事業。その成長を支える主力事業所「名古屋製作所」では新たな生産棟を5月に本格稼働させる。分工場の生産性向上に向けた投資も加速させ、成長を「もう一段上に」加速させる方針だ。競争環境が厳しくなる中、成長を続ける秘訣は何があるのだろうか。名古屋製作所 所長の山本雅之氏に話を聞いた。

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名古屋製作所が目指す「一流化」とは

MONOist 設計・開発から生産までを運営する中で、どういうことを重視して取り組みを進めているのでしょうか。

山本氏 名古屋製作所は、グローバルの生産拠点におけるマザー工場と位置付けている。開発から評価試験、出荷試験まで全て製作所内で完結できる。そういう環境で作り込んだ生産技術を海外工場に展開していくというのが基本方針となっている。

 しかし一方で、キーパーツは守る。各種製品において、競争のコアになるところは名古屋製作所内で生産し、海外に移管することはない。キーパーツについては名古屋製作所内で作った後、モジュールの形で海外に持って行き、ブラックボックスとして保つ方針だ。筐体などは海外で現地調達すればいいが、“肝”となるものを海外に持ち出せば、技術的な強みが損なわれる。重要な部品は、名古屋製作所内で生産し、継続的に差別化の源泉となるようにしていく。

 これらの基本方針の上で現在取り組んでいるのが「開発」「モノづくり」「品質・サービス」の3つの「一流化」だ。産業用機器に求められる品質は一般消費者向けの製品とは大きく異なり、高いレベルの品質が要求される。その要求に応えられるようにモノづくりの全ての面において“一流”を実現するとともに、もう一段モノづくりの品質・生産性を高められるように取り組みを進めている。

 例えば、名古屋製作所では、LSIテスター、X線スキャナ、超音波探査装置、EMCセンター(大型電波暗室)、複合環境試験装置などの検査装置を全て自前でそろえ、各種テストを行える環境を構築している。そのためモノづくりの深いところまで自前で問題点を洗い出し品質を担保することが可能だ。これらの環境を活用することにより、問題発生時などに取引先に説得力のある形で説明を行うことができるようになる。

 開発面では、名古屋製作所内に「FA開発センター」「メカトロ開発センター」などを設置する他、三菱電機全体の研究所との連携を取りながら、先進技術の開発を推進している。

サーボモータの自動化ライン
名古屋製作所内のサーボモータの自動化ライン。独自の生産技術を採用しているが「生産システム推進部」が担当している。

 モノづくりの面では、生産技術を専門に取り組む「生産システム推進部」による技術向上が進められている。これは名古屋製作所全体の生産技術を抽出してノウハウ化し、それを活用する部門だ。

 例えば、サーボモーターで三菱電機は独自方式を採用しており、巻き線技術や鉄芯などが他社とは異なる。こういう場合、一般の生産設備では効率的な生産が行えないため専用の自動化設備が必要になる。こういう生産設備や自動化設備を自分たちで構築して展開するのが生産システム推進部の役割だ。こうした取り組みを名古屋製作所内で行えるところはモノづくりの大きな強みだ。

「見える化」を「見せる」新生産棟

MONOist 2011年に2016年3月期(2015年度)にFAシステム事業本部全体では連結売上高を6000億円に引き上げる計画を示していますが、名古屋製作所として、その目標に対する進捗度はいかがでしょうか。

山本氏 今のところ名古屋製作所の担当分については順調だ。全般的に追い風が吹いている。名古屋製作所には、岐阜県可児市の可児工場、愛知県新城市の新城工場の2つの分工場があるが、これら全てで生産能力向上に向けた積極的な投資を行っているところだ。

 名古屋製作所では新生産棟を建設し、2014年5月の本格稼働に向けて現在設備移転を行っているところだ。同工場はe-F@ctoryを活用し、シーケンサでビル制御を行っている。シーケンサによる制御で、生産状況の把握だけでなく、新棟各部屋の空調や照明の制御などを行えることが特徴だ。e-F@ctoryにより、ビルの環境および作業状況の徹底した“見える化”も実現する。

 一方、顧客に“見せられる”ようにしていることも新工場の狙いだ。e-F@ctoryのモデルルームを用意するとともに、通路はガラス張りとなっており、工場内を見ることができる。また各フロアにディスプレイを設置し、空調・照明などのビル制御状況も見学者が見られるようにしている。いくら言葉でe-F@ctoryの説明をしても、実体験レベルで理解を得るのは難しい。実際に使用しているところを見てもらい「導入することでこういう価値がある」というイメージを作ってもらう。

生産新棟
生産新棟。6階建ての高層構造で延べ床面積は2万5800m2。シーケンサやHMI機器、インバータ用キーパーツを生産する。部品の垂直搬送を行い、組み立て、出荷までを一貫して行える。耐震構造でBCP拠点としても活用する計画だ。総投資額は約65億円。

 名古屋製作所の新棟の他、新城工場の三相モーターの生産ラインも新たに約25億円の投資を行い、2015年度には従来比1.2倍となる年間31万台へと生産能力を高める。電磁開閉器を生産する可児工場では、ロボットを「セル生産方式」型に配置した「ロボットセル」を含む新たな生産体制を約20億円の投資で稼働させ、生産性は従来比1.3倍に向上させる。積極的な投資で生産能力を高め、積極的に拡大するグローバル需要に対応していく方針だ。

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