検索
特集

「トヨタはすし屋になりたい」――その心は?第5回国際自動車通信技術展 基調講演リポート(2/3 ページ)

第5回国際自動車通信技術展」の基調講演に、トヨタ自動車の常務役員を務める友山茂樹氏が登壇。「トヨタ方式とICTによる自動車販売革命」と題した講演の最後に、友山氏は「トヨタはすし屋になりたい」と語った。この言葉にはどういう意味があるのだろうか。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

営業活動の改善のために採用した「e-CRB」

 ディーラーの活動で最も重要なのは、自動車を顧客に販売する営業活動であろう。1人の営業員が販売できる台数は、見込み客数×成約率から導き出すことができる。友山氏は、「このうち成約率は、商品力で大きく左右されるので、営業員の努力ではどうしようもない場合が多い。しかし、見込み客数は、営業員や店舗の努力なくして確保することはできない。見込み客数をとれるような改善が必要だ」と説明する。


ディーラーの販売台数は見込み客数×成約率
ディーラーの販売台数は見込み客数×成約率(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 しかし、営業員は、自動車を販売した顧客に行うCR(カスタマー・リテンション)活動だけでも、納車した顧客へのお礼のダイレクトメール(DM)発送から、電話フォロー、1カ月点検のDM発送とその電話フォロー、点検で入庫した後の電話フォロー、6カ月点検に付帯するDM発送や電話フォロー、そして誕生日の花束配送など、やるべきことは極めて多い。また、これらの作業は、営業員が直接行うのではなく、アシスタントやコールセンター、サービスアドバイザーなどが分業で行うようになっている。

ディーラーの営業員のCR活動の煩雑さ(左)と分業化するオペレーション(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 商談管理まで含めれば営業員の行う作業は膨大なものとなり、もはや営業員自身では管理し切れなくなってしまう。また、上司の営業マネジャーが、TPSが誇るかんばん方式で営業員の活動を管理しようとしても、数十人の営業員がかかえる数百人の顧客の状況を管理ボードにまとめることは不可能だ。

 そこでディーラーの業務改善のため、2004年から採用しているのがICTを活用したシステム「e-CRB」である。e-CRBは、見込み客の情報を集積しCR活動を支援する「i-CROP」、営業員の販売プロセスを管理する「SPM」、アフターサービス活動の作業進捗を表示する「SMB」などから構成されている。

 しかし、このe-CRB、初めて導入されたのは国内ではなく、中国、インド、タイといった新興国だった。友山氏は、「トヨタ自動車全体の販売台数のうち、新興国の占める割合は急増している、2002年は20%程度だったが、2013年は約45%。近い将来、確実に先進国を上回る。そして、新興国の販売店は、国内と比べて、スタッフの平均年齢が若く、退職率も高めだ。1人当たりの販売台数、車検などのサービス入庫台数も多い。そういった状況下では、ICTを活用したシステムであるe-CRBの役割はより大きなものになる」と強調する。つまり国内ディーラーにおける改善ノウハウをICT化し、e-CRBとして新興国のディーラーに展開。その運用成果を、国内ディーラーにフィードバックするというサイクルになるわけだ。

新興国と国内のディーラーの比較(左)と「e-CRB」の展開方針(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る