「Beacon」「NFC」「音響通信」――スマホ活用進む! 購買体験を革新する注目技術:リテールテックJAPAN 2014 リポート(1/2 ページ)
第30回流通情報システム総合展「リテールテックJAPAN 2014」が、2014年3月4〜7日の4日間、東京ビッグサイトで開催された。本稿では“近未来の購買体験”を実現する、スマートフォンを活用した来店・販売促進の取り組みをリポートする。
第30回流通情報システム総合展「リテールテックJAPAN 2014」(主催:日本経済新聞社)が、2014年3月4〜7日の4日間、東京ビッグサイトで開催された。同展示会は、効率的な店舗運営、来店促進、マーケティング活動に関する最新のIT機器/システム/ソリューションなどが一堂に集結する、流通・小売業をターゲットにした専門展として知られている。
展示会場では、最新のPOSや決済システム、デジタルサイネージなどの展示デモを多数見ることができ、消費者視点からも“近未来の購買体験”を感じ取ることができる。特に、近年、Beaconのようなプッシュ型の情報発信技術の登場により、スマートフォン(以下、スマホ)を活用した来店・販売促進の取り組み(いわゆる“O2O:Online to Offline”)が、ますます面白くなってきている。本稿では、このあたりの話題を中心に取り上げることにしたい。
来店から購買まで――「iBeacon」に対応したインテリジェントな書棚
インテルと日本マイクロソフトの共同ブースでは、SBクリエイティブが開発した「インテリジェント・ブックシェルフ」の実機デモを披露。2014年1月末に開催された、第38回日本ショッピングセンター全国大会「SCビジネスフェア2014」(主催:日本ショッピングセンター協会)でも同様の展示を行っていたが、今回はそれをさらにブラッシュアップして、より製品化に近づけたデモ機を用意した(関連記事:ショッピングカートもインテリジェントに! インテルが購買体験を進化させ)。
書籍の陳列棚とデジタルサイネージが融合したような装置で、4段の棚それぞれには5台の小型ディスプレイ(4.3インチ)を搭載し、最上部の大型ディスプレイと併せて合計21台をデイジーチェーン接続して、さまざまなデジタルコンテンツの配信を行う。棚の内部には、制御コンピュータとして、「Intel NUC(Next Unit of Computing)」が組み込まれている。各ディスプレイへのコンテンツ配信には、インテルが2013年11月に発表したデジタルサイネージ向けコンテンツ管理システム「Intel Retail Client Manager(RCM)」を採用する。
さらに、近距離無線通信機能(Bluetooth Low Energyに対応)を有し、スマホやタブレット端末との通信が可能。アップルが「iOS 7」からサポートした、Bluetooth Low Energyを使用した新機能「iBeacon」にも対応。「書店に来店すると、インテリジェント・ブックシェルフへ案内するためのウェルカムメッセージをiPhoneに送信。それを見た来店者がインテリジェント・ブックシェルフに近づくと、今度は、最新の書籍や立ち読み可能なデジタルコンテンツ(電子書籍)の案内など、さまざまな情報を提供する。そこで実際の書籍を手に取って見てもいいし、スマホでデジタルコンテンツを立ち読みしてもよい。このように、来店から興味・関心を引き出すまでの道筋を用意することで、店頭での購買行動やデジタルコンテンツのダウンロード販売につなげられる」(説明員)。
SBクリエイティブとハーレクインは、同装置の設置について、既に全国の書店への提案活動を実施。2014年5月以降、紀伊国屋書店の新宿本店、新宿南店、渋谷店、リブロの浅草店への設置が決定している。
画像5 「インテリジェント・ブックシェルフ」は、ハーレクインの電子書籍をスマホなどで楽しむことができるアプリ(SBクリエイティブが開発)と連携し、新刊や関連書籍情報の提供、来店ポイントの付与などが行える
新たな店舗利用・店舗体験――「カスタム・シューズ・シミュレーター」
同じく、インテルと日本マイクロソフトの共同ブースでは、電通レイザーフィッシュが出展し、「カスタム・シューズ・シミュレーター」のデモを実演していた。
「NIKEiD」や「mi adidas」など、Web上でオリジナルのスニーカーなどをデザインし、注文できるサービスが既に存在するが、PCの画面では素材の質感などが分かりにくいという課題がある。また実際に、販売員の意見などを聞きながら自分仕様のスニーカーを作りたいという声もあり、電通レイザーフィッシュは、店舗内でカスタムシューズをシミュレートできるソリューションを開発した。
大型のタッチパネルディスプレイで、スニーカーの各パーツの色や素材を指定するわけだが、店舗であれば、実際の素材や色を確認した上で、仕様を決めることができる。サンプル素材にRFIDタグを付けておけば、来店者が選択したサンプル素材をディスプレイ下のRFIDリーダーにタッチするだけで、すぐにシミュレータ画面に反映できる。「思い通りの仕様に仕上がったら、そのまま店舗で注文してもよいし、完成後に表示されるQRコードをスマホで読み取り、カスタムした内容を持ち帰り、検討した上で、後日注文してもよい」(説明員)。また、CRM(Customer Relationship Management)と連携させれば、足のサイズや購入履歴などを参照することも可能で、「販売員が自らお客さまの好みに合わせた商品提案(カスタマイズ提案)なども行える」(説明員)という。
さらに、前述のデモと同様、iBeaconを用いたプッシュ型の訴求が可能。来店者に対して、クーポン券を配布したり、キャンペーンの案内などを発信したりすることもできる。
電通レイザーフィッシュは、他にも、新たな店舗体験を演出する仕掛けとして、複数のタブレット端末を活用したデジタルサイネージシステムや、ジェスチャーで写真撮影&プリントが行えるデジタルサイネージなども展示していた。
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