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「KOPEN」はモノづくりの新しい仕組みのアイコンとなるのか(後編)車両デザイン(3/3 ページ)

樹脂外板をスマートフォンケースのように“着せ替え”られる、ダイハツ工業の軽スポーツカーのコンセプトモデル「KOPEN」。このKOPENが生み出そうとしている「モノづくりの新しい仕組み」について、プロダクトデザイナーの林田浩一氏による分析と提言をお届けする。

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マツダ「AZ-1」と「KOPEN」は何が違うのか

 東京モーターショー2013でKOPENを見て以来、同じようなボディ骨格+樹脂外板という構造を持つマツダの「AZ-1」(1992年発売。当時のマツダは、それぞれを「スケルトンモノコック」と「ボディアウターパネル」と表現していた)と何が違うのかとずっと頭の片隅で考えていた。AZ-1も、カスタマイズベースとして使用され、オリジナルボディ作りを試みた例もあったと記憶しているが、ごく一部のマニア層への訴求にとどまっていた。


マツダの「AZ-1」の外観
マツダの「AZ-1」の外観。ボディ骨格+樹脂外板という車両構造は「KOPEN」と同じである(クリックで拡大) 出典:マツダ

 AZ-1とKOPENの違い。交換用の樹脂外板が開発/製造/販売されるという意味では、モノづくりにおける広がりの可能性は似たようなものかもしれない。しかし、AZ-1の視野にはクルマそのものしか入っていなかったのに対し、KOPENはクルマを取り巻く新たな仕組みを作ろうとしているところが異なるのではないだろうか。

 加えてソーシャルメディアが当たり前のツールとなってきている時代性であったり、MAKERS以降の新しいモノづくりに対する関心の広がり、クラウドファンディングなどによって作り手の仲間に加わり体験を得たユーザーの増加……etc. 外部環境としても、AZ-1の時代よりは、KOPENの持つ余白部分をモノづくりの新しい仕組みへと盛り上げていく上で後押しになりそうな風は吹いている。

 メーカーがあえて作る製品の余白に、外部の創造性を呼び込むには、製品の可能性を見せるだけでなく、発展させていく仕組みやその運用が必要だ。そこでは関わって欲しい人たちとのコミュニケーションが不可欠となる。ターゲットユーザーに向けてボールを投げるというより、「○○する人、この指とまれ!」と指を掲げるイメージ。メーカーは魅力的な製品を創り出す力だけでなく、コミュニケーション力も磨かれなければ、製品は商品とはならない時代ともいえる。

 KOPENの樹脂外板データ公開から、モノづくりの新しい仕組みがどのような広がりを見せるのか、楽しみにしたい。

Profile

林田浩一(はやしだ こういち)

デザインディレクター/プロダクトデザイナー。自動車メーカーでのデザイナー、コンサルティング会社でのマーケティングコンサルタントなどを経て、2005年よりデザイナーとしてのモノづくり、企業がデザインを使いこなす視点からの商品開発、事業戦略支援、新規事業開発支援などの領域で活動中。ときにはデザイナーだったり、ときはコンサルタントだったり……基本的に黒子。2010年には異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。最近は中小企業が受託開発から自社オリジナル商品を自主開発していく、新規事業立上げ支援の業務なども増えている。ウェブサイト/ブログ誠ブログ「デザイン、マーケティング、ブランドと“ナントカ”は使いよう。」などでも情報を発信中。



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