「KOPEN」はモノづくりの新しい仕組みのアイコンとなるのか(後編):車両デザイン(2/3 ページ)
樹脂外板をスマートフォンケースのように“着せ替え”られる、ダイハツ工業の軽スポーツカーのコンセプトモデル「KOPEN」。このKOPENが生み出そうとしている「モノづくりの新しい仕組み」について、プロダクトデザイナーの林田浩一氏による分析と提言をお届けする。
KOPEN×ユーザー
ユーザーが自分オリジナルの1台を作る
製品に手を加える余地があるだけでなく、そのためにメーカー自身が樹脂外板の関連データを積極的に公開する。これまでにない画期的な取り組みに興味を持ち、自分でも手を出してみようという気分になる人たちが増え、盛り上がりが生まれる可能性は大いにある。
また、「MAKERS」や「3Dプリンタ」というキーワードがメディアをにぎわすようになって以降、デジタルファブリケーションに興味を持つ人は増えてきている印象もある。そういった環境の中、ちょっと大きめのプラモデルのような感覚で、自分で手を加えてみようと思う人も出てくるかもしれない。KOPENが、201311月の「東京モーターショー2013」にKOPENを初公開した時から、ミニ四駆とセットで展示とプロモーションを続けているのはなかなかに良いアイデアだと感じている。
ただし現時点では、モノとして仕立てる最後のところに大きなハードルがあるのも事実だ。ダイハツが提供する樹脂外板関連のデータを基に、オリジナルデザインのボディのデータを作るところまではやれても、3Dプリンタでバンパーやフェンダーを気軽に出力するというのはまだまだ現実的ではない。
アイデアをデータ化し、クルマのボディパーツとして具体化する段階では、繊維強化プラスチック(FRP)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などで作る、純正ボディをベースに加工するといった既存の手法が選択肢になると思う。モノにするところまで手助けするユーザー向けのワークショップとか、ユーザーのデザインしたデータから製作するサービスとか、何らかの手助けが必要だろう。
自分オリジナルの1台が欲しいユーザーと作り手をつなぐ
一方で、自分だけのオリジナルの1台が欲しいと思っても、全ての人が自分の手で作れるわけではない。もしくは、自分では作れない/作りたくないけれども、自分だけ1台を求める人もいるだろう。そういった人と作り手をつなぐサービスがあればハードルは下がる。KOPENの盛り上げにユーザーを巻き込むという意味では、ユーザーがやりたいことから逆引きできる索引のような仕掛けもあってほしい。
KOPENの特徴である樹脂外板の着せ替えはキャッチーではあるが、ユーザー側から見た場合、交換したパネルの保管や交換に掛かる費用などを考えると、実際に着せ替えをやるユーザーはさほど多くはないと想像できる。ただ交換できる樹脂外板と、それ以外のクルマ本体とで、使用と所有とに分けるとまた話が変わってくるのでは? というようにも思う。
十人十色のKOPEN――自分オリジナルの1台を求めるユーザーからの共感を得るために、ユーザー自身が作るか作らないかという軸と、樹脂外板を所有するかしないかという軸、2つの軸のマトリックスからサービス(ビジネス)を考えてみるのも面白いかもしれない。
KOPEN×クリエーター
KOPENが目指す、新しいモノづくりの仕組み作りには、藤下氏がトークショーで語った「クリエーターを巻き込む」ための仕掛けがカギになりそうだ。「クリエーター=ユーザー」である場合は話がシンプルだが、そうでない場合もあり得る。KOPENを題材にクリエーターが何かをしたいと興味を持った時、どうすればその思いを具現化できるのだろうか?
ダイハツがクリエーターと何かやる。アフターパーツメーカーがクリエーターと組む。ユーザーがクリエーターに依頼する……。ちょっと思い付くだけでもさまざまな組み合わせがあるし、通常のクルマ作りとはまた異なる面白いことが起きそうなことへの期待感もある。そういったことからもさまざまなクリエーターとの出会いの場や協創の場を、誰がどのように作り運営していくのかということは重要な要素となりそうである。
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