トヨタの分かりにくさ、BMWの分かりやすさ:プロダクトデザイナーが見た東京モーターショー2013(4/7 ページ)
「東京モーターショー2013」における各自動車メーカーの展示内容やコンセプトカーをプロダクトデザイナーが斬る。トヨタ自動車/レクサスブースと、BMW/MINIブースの展示内容から感じたこととは?
日産はどうだった?
何となくテクノロジーの活用によるクルマの未来像な雰囲気のトヨタ自動車ブースから、日産自動車のブースへ移動すると、創立80周年ということに絡めて、時間軸で未来を描こうとしているところが大きな違いと感じる。入り口の「DATSUN 14 ROADSTER R380」や「日産R380」といった過去のクルマから、現在の市販車を抜けると、「IDx」や「ブレイドグライダー」といったコンセプトカーによる未来が描かれたステージへたどり着く。壁面には歴代のクルマや、車両エンブレムの変遷が年表のように並べられていて、時間の流れをブース全体で視覚化していたのは他社のブースにはない特徴だった。
コンセプトカーについては、電気自動車に対する攻めの姿勢のアイコンとなるブレイドグライダーには正直そんなに心は引かれなかったけど、2モデルをそろえたIDxの方は「コ・クリエーション(共同創造)」を取り入れ開発したとのことで、商品開発にユーザー層を取り込むという方向性は注目である。
IDxでは、「ジェネレーションZが商品開発に参加できるプラットフォームを提供し、彼らの『何かを変えたい』『新しい価値を創造したい』という欲求を、IT関連だけでなく自動車にも向けてもらう。彼らを物作りのストーリーに巻き込むことで、自動車に革新と興奮を巻き起こそう」(プレスリリースより)と、さらりと表現されているだけであるが、未来のユーザーとの商品開発段階からの関わり方として、今後どう展開されていくのか興味深い。
同時にクルマ好きなオジサンとしては、そうやって出てきたクルマが、どことなくかつてのブルーバードみたいな雰囲気が漂うものだったのも面白いと感じたところだった。
ルノーデザインのテーマは人のライフサイクルを6段階に分ける
日産自動車とアライアンスを形成するルノーのブースでは、こちらも違った内容ながら時間軸による表現を行っていた。パッと見た感じだと、真ん中にコンセプトカー「デジール」を据え、その周囲に市販車を並べるという普通な感じなのだが、その展示全体が新しいルノーデザインのプレゼンテーションであった。それがどう時間軸の表現なの? と、読者の方や実際に会場に行かれた方の中にもそう思われるかもしれないが、このルノーデザインのテーマは、人のライフサイクルを6段階に分けて、それぞれのステージに合わせたモデルやデザインを提供するというもの。
自社のクルマに何か共通したデザイン要素(レクサスのスピンドルグリルやBMWのホフマイスターキンクと呼ばれるCピラーの形状など)を全車に取り入れることで、同じブランドのクルマに一貫性あるイメージを作ろうというのは手法としても定着しているが、ルノーのように人のライフサイクルに焦点を当てて“らしさ”をデザインしていくというやり方が“あり”なのは理解できる。ただ、それをブランドの一貫したイメージにしていくのはハードルも高そうである。ひとまずは、新しいクルマから顔つきに共通イメージを与えることで、ルノーデザインが新しい段階に入ったよ、という宣言からということなのかもしれない。
見せ方のテーマとしては面白いけど、説明を聞かなければ意図が分からなかったというところは少し残念。ただ、日本に投入されているモデルのバリエーションは幅広くないので、ブランドの特徴は出ていてローカルなブランド戦略としては上手にコントロールしている印象である。展示新車種の「キャプチャー」なども、遊び心を感じさせるデザインながらオモチャっぽくもなく、路上で眺めたり乗ってみたりしたいと思った1台であった。
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