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BMWの「i8」はスポーツクーペの出来杉クン? EVだけどしっかりBMWしてる「i3」今井優杏のエコカー☆進化論(6)(3/3 ページ)

自動車ジャーナリストの今井優杏さんが、独自の切り口で最新のエコカーや搭載技術を紹介する本連載。今回は、BMWが満を持して発表した電気自動車(EV)「i3」とプラグインハイブリッド車「i8」を取り上げる。

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「i3」のドライブフィールはMINIの「COOPER S」に似た感じ?

 そしてi3です。

 先述の通りこちらは電気自動車で、日本でも2013年4月から販売されることが決定しています(i8は同年夏以降というふんわりしたアナウンスです)。欧州で各国のジャーナリストを対象にした国際試乗会も既に開催済み。残念ながら私はまだ試乗を楽しみにしている段階なのですが、最高出力125kWというのは170ps相当になりますし、最大トルクは250Nmですから、街乗りではかなりキュンキュンしたハンドリングが楽しめるはずです。

「i3」の外観(クリックで拡大)

 え? 数字で言われてもピンと来ないって?

 そうですね、ガソリンエンジンとモーターを比較するのはトルク特性上ちょっと乱暴なのですが、BMWの「MINI」ブランドであれば、「COOPER」が122ps、「COOPER S」が184psで最大トルクが240Nmですから、COOPER Sに似た感じのドライブフィールだと考えればイメージしやすいかもしれません。

 注目点は、こちらも相当な軽量化を果たしていること。

 i3の車両重量は1260kg。対してガチの競合車両である日産自動車の電気自動車「リーフ」が、一番軽量なグレードで1430kg。何と170kgも軽いのです。レーシングカーが徹底した軽量化で高いパフォーマンスを出しているように、軽けりゃそりゃハンドリングも楽しいに決まってる! し、バッテリーへの負担も軽くなります。その結果、もちろんバッテリーの延命にも貢献してくるでしょう。

 そう、電気自動車といえばバッテリーの搭載は避けられないわけですが、これがなかなかに重量級なのです。そこでi8と同じくボディにCFRPとアルミを使って軽量化することで相殺するという大胆な手法を採用。

 結果、車両床下部に重たいバッテリーを配置し、その上に乗っかるアルミやCFRPを使ったボディは軽いのでいわゆる『低重心化』が自動的にかないました。前後重量配分も50:50で後輪駆動というBMWならではの電気自動車が誕生しました。

「i3」のボディ骨格
「i3」のボディ骨格。車両床下部にバッテリーのリチウムイオン電池を敷き詰めている(クリックで拡大)

 そのハンドリングについて、既にドイツでi3に試乗してきたというAJAJ会長でモータージャーナリストの日下部保雄先生に伺ったところ、「見た目は床の高いミニバンライクな姿ながら、とってもスポーティーでしっかりと『BMWしてる』」んだそうな。ホイールベースの短さから小回りも抜群で、しかしピッチングは抑えられ、低重心なのでロール値も低いとのこと。

「i3」の走行イメージ
「i3」の走行イメージ(クリックで拡大) 出典:BMW

 ちなみに装着されるタイヤも独特で、リム径が19インチ(オプションで20インチもあり)という大径タイヤが採用されたわけなのですが、タイヤ幅は前輪が155mm、後輪が175mmというまるでバイク用のような細身のブリヂストン特注品。デザインのスポーティーさを失うことなくタイヤの前後方向の接地面を増やし、ハンドリングをも犠牲にしないよう、うまいこと考えているんですよね。

 i3の発表当初問題になっていた肝心の走行距離ですが、満充電状態から約130〜160kmの走行が可能。さらにBMWのエンジン搭載車両にも既に採用されている「ECO PRO」や「ECO PRO+」という走行モードを選択すれば、それぞれ180km、200kmと走行距離を伸ばすこともできます。

 リーフが228km(JC08モード)ですから、やや迫る勢いです。

 さらに移動距離の長い欧州でも即戦力になれるよう、i3には「レンジエクステンダー」というオプションが選択できます。

 これは2気筒の二輪車用エンジンを流用したもので、バッテリーの容量が低下したときに発電するために使います(同じように「エンジンを搭載する電気自動車」でも、エンジンを使って走行する場合には「プラグインハイブリッド車」、エンジンを発電にしか使わないなら「レンジエクステンダー」と呼び名が変わるのです。ややこしいよね)。

「レンジエクステンダー」は車両後部に搭載したモーター横の空きスペースに配置されている
「レンジエクステンダー」は車両後部に搭載したモーター横の空きスペースに配置されている(クリックで拡大) 出典:BMW

 これを搭載すれば300kmまで走行距離を伸ばせますから、「もしものときの保険」としてはとっても心強い存在。価格もわずか50万円増えるだけなので、私なら迷わずレンジエクステンダー付きを選んじゃうな。

 ちなみにi3は、CHAdeMOによる急速充電にも対応。約30分でバッテリー容量の80%まで充電できますから、ホントに「茶でも」飲んでいる間に充電が終わっちゃうってワケ。ああ、なんか欲しくなってきた!

 でも私の住んでいる神奈川県、2014年度から電気自動車の導入補助金制度がなくなっちゃうんですよ。充電インフラはわりと充実しているんですが、ね。

 i3の車両価格は499万円。レンジエクステンダー付きで546万円。

 補助金なしで買うとしたら、4人乗りの自動車としてはちょっと……いや、皆まで言うまい。



 さて、これまではi3とi8のクルマそのものに焦点を当ててお話してきましたが、実はBMWのiシリーズ、単に走行性能の素晴らしい電気自動車やプラグインハイブリッド車というだけでなく、壮大なプロジェクトの一部でもあるのです。

 高価過ぎるCFRPをどんなふうに市販車に採用しローコスト化をかなえているのか、などなど、次回はBMWの考えるサスティナビリティについて考えてみたいと思います。

 というわけでTo be continued☆

プロフィール

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今井 優杏(いまい ゆうき)

レースクイーン、広告代理店勤務を経て自動車ジャーナリストに転向し、Webメディア、自動車専門誌に寄稿。そのかたわら、モータースポーツMCとしての肩書も持ち、サーキットや各種レース、自動車イベントなどでMCも務め、日本全国を飛び回る日々を送っている放浪系女子。自動二輪と自転車、両方の意味でのバイク好きでもある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員、2013〜2014日本カーオブザイヤー選考委員。



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