超小型モビリティは普及するのか――東京モーターショー2013から見えた課題:和田憲一郎の電動化新時代!(9)(3/3 ページ)
「第43回東京モーターショー2013」の併催イベント「SMART MOBILITY CITY 2013」では、注目を集める超小型モビリティが多数展示された。試乗体験コーナーに行列ができるなど盛り上がったが、普及に向けた課題も見えてきた。
規格First、実証Secondで導入を進めるべき
超小型モビリティの実証試験に向けて、国土交通省は2013年1月に「公道走行を可能とする認定制度の創設」を施行している。その主な内容は以下の通りだ。
国土交通省が定める超小型モビリティの認定車両の規格
安全確保を最優先に考え、高速道路は走行しないこと、交通の安全などが図られている場所において運行することなどを条件に規制を緩和し、以下認定により公道走行を可能とする。
- 長さ、幅、高さが軽自動車の規格内の三・四輪自動車
- 乗員定員2人以下のもの
- 定格出力8kW以下(内燃機関の場合は125cc以下)
ただし、このような大枠が定まっているだけであり、衝突安全性やブレーキの制動距離、最高速度といった詳細が決まっているわけではない。国土交通省は、各地で実証試験を行って技術的な資料を得て、その後で保安基準などの見直しに着手するというスタンスだ。
手順の問題にすぎないのかもしれないが、海外、例えば欧州では規格/基準作りが先行するのが通例だ。まず自動車メーカーや自動車部品メーカー、有識者が集まって欧州連合(EU)や欧州自動車工業会(ACEA)などで議論を重ね、規格を決める。その後、決まった規格に基づいて、自動車メーカーが車両を開発するというプロセスを取っている。
既に欧州では、L6カテゴリー(モーター最高出力4kW以下)とL7カテゴリー(モーター最高出力15kW以下)という小型四輪車の規格が策定されている。日本の超小型モビリティは、これらのちょうど中間に位置している。
規格策定から始める欧州と異なり、日本の超小型モビリティは、今回の認定制度による実証試験で得た結果から保安基準などの見直しを行うことになっている。内容が詳細に決まってくる過程で認定制度からの変更が発生した場合には、小規模ベンチャーから大手自動車メーカーまで、超小型モビリティを手掛ける企業にとって開発が二度手間になることが懸念される。
日本の超小型モビリティについても、欧州と同様に、規格First、実証Secondで導入を進める方がよいのでないだろうか。既に実証試験は始まっているが、できる限り早急に超小型モビリティの規格の方向性を絞り込めば、余分な開発投資が避けられるので実現への近道になると考える。
また、自動車の国際基準調和の観点からも、日本独自の法整備を行うのではなく、欧米と協力しながら共通の基準で規格策定を進めることが望まれている。日本の超小型モビリティが独自の規格にこだわる必要性や、欧州のL6/L7カテゴリーの小型EVとの関係をどうするのかなど、もう一度議論すべきかもしれない。
超小型モビリティ。注目を集めているものの、まだそのあるべき形はぼんやりとしか見えてきていない。しかし、この超小型モビリティが失速しないよう、行政や自動車メーカーなどが一体となって大切に育てていくことが求められている。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
1989年に三菱自動車に入社後、主に内装設計を担当。2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。2007年の開発プロジェクトの正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任し、2009年に開発本部 MiEV技術部 担当部長、2010年にEVビジネス本部 上級エキスパートとなる。その後も三菱自動車のEVビジネスをけん引。電気自動車やプラグインハイブリッド車の普及をさらに進めるべく、2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立した。
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