超小型モビリティは普及するのか――東京モーターショー2013から見えた課題:和田憲一郎の電動化新時代!(9)(2/3 ページ)
「第43回東京モーターショー2013」の併催イベント「SMART MOBILITY CITY 2013」では、注目を集める超小型モビリティが多数展示された。試乗体験コーナーに行列ができるなど盛り上がったが、普及に向けた課題も見えてきた。
超小型モビリティの将来は明るい?
超小型モビリティの導入には以下のような利点があるとされている。
- 軽自動車よりも小さいカテゴリーに属し、公共交通の利便性が悪かったり、自動車以外の運転手段がなかったり、徒歩による移動負担が大きかったりする人々にとって便利
- 観光地でのツアー客や地域住民の移動手段などにもなり、地域振興に役立つ
- 高齢者や児童の送り迎えを手軽に行う手段となり得る
- 基本的に電動車両が想定されているので、環境負荷が低く、CO2削減につながる
これだけ多くの車両が開発されており、今後は量産投入が始まるのであれば、「さぞかし超小型モビリティの将来は明るいのではないか」と思われるだろう。そこで、各社の展示担当者に実際に先行きを聞いてみたが、どうも顔が曇りがちなのである。
主たる理由は、超小型モビリティという車両区分がいまだ中途半端な位置付けにあり、はっきりしていないところにある。
超小型モビリティの課題
筆者自身が幾つかの車両を試乗したところ、超小型モビリティには以下のような課題があるように感じた。
車両の衝突安全性
このような小さな車両になると、どこまで衝突安全性が担保されているのか気になるところである。自然公園や観光地など閉鎖された敷地内で走行するのであれば問題ない。しかし超小型モビリティは、高速道路を除いて公道を走れることになっている。国道やバイパス道路のように、トラックやバスが混在してかなりのスピードで走行するエリアでは、超小型モビリティの受容性をよく確認する必要がある。
車両として少しパワー不足では?
例えば、ホンダの「MC-β」は、走行モーターの定格出力が6kWである。実証実験などで超小型モビリティを運用する際の認証制度では、定格出力8kW以下が条件になっているようだ。一方、法制度上は超小型モビリティと同じ軽自動車に属する三菱自動車のEV「i-MiEV」の定格出力は30kWである。必ずしも比較する必要はないかもしれないが、実際に試乗した感触からは、超小型モビリティのパワーが不足しており、公道でクルマの流れに乗るのは難しいのではないか、という印象を持った。
ドアにガラスが付いていない
フロントガラスの結露を防止するデフロスター機能を有していない車両は、クローズドドアを装備できないようである。しかしこれだと、冬はとても寒くて走れない。特に、高齢者や子どもを同乗させたい方にはつらいのではないだろうか。また、降雨時はそのまま車室内に雨が入ってきてしまい走行どころではなくなる。最近では、ゲリラ豪雨に代表されるように、いつどのような勢いで雨が降るか分からないことを考えると、対応に苦慮することもあり得る。ビニールシートのようなもので側面を覆うことができる仕様もあるようだが、これも運転時の視界が悪くなるという課題がある。
超小型モビリティの試乗コースの様子。手前にある日産自動車の「New Mobility CONCEPT」、中央にあるホンダの「MC-β」はドアに窓ガラスがない。また、MC-βの奥にあるトヨタ車体の「コムス」はドアそのものがない(クリックで拡大)
冷暖房を装備できない
車両サイズは最大で軽自動車規格まで許されているにもかかわらず、冷暖房を装備していないことはユーザーから見て不便に思えるのではないだろうか。電池容量、車両価格、レイアウト、上記クローズドドアの問題なども考慮すると、冷暖房がないのもやむなしとなるのであろう。しかし、冷暖房のないクルマがどこまで受け入れられるのか、今後よく確認すべきだろう。
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