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それは車輪の再発明――希望の輝きを放つ自転車、「FUKUSHIMA Wheel」が描く未来会津若松から世界へ(4/4 ページ)

福島県会津若松市に拠点を置くベンチャー企業、Eyes, JAPANは、自転車をビジネスモデルの中心に据えた一風変わったシステム「FUKUSHIMA Wheel」を開発し、世界進出を図ろうとしている。自転車をひとたび走らせれば、放射線量をはじめとするさまざまな環境データを収集し、LEDを搭載した後輪部分にはさまざまな広告やメッセージが表示される。本稿では、FUKUSHIMA Wheelの開発に込められた思いと、ビジネスの可能性について紹介する。

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会津若松から世界へ、“FUKUSHIMA”を世界のブランドに

 東日本大震災が発生したあの日。東北地方に甚大な被害をもたらしただけでなく、東京都内などの都心部では交通機関がマヒし、多くの帰宅難民であふれ返った。震災発生時の交通手段の確保は、今後に残された課題といえる。

 これに対し、山寺氏は「FUKUSHIMA Wheelのレンタサイクルシステムを緊急時の交通手段に活用できるのではないかと考えている」という。公共交通手段の1つとして、無料レンタルできる自転車を用意すれば、利用者は多いだろう。どの地域でもオフィスや商業施設などは駅の3km圏内に収まっているという。これなら自転車で十分、移動可能な距離だ。

 発災時に、交通インフラが寸断された場合、レンタサイクルシステムのセキュリティを解除して一般に無料開放する。災害支援型自動販売機が緊急時に飲料を無料提供するのと同じようなことをFUKUSHIMA Wheelで実現し、帰宅難民の“足”を確保する構想だ。「2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、東京周辺の交通インフラを見直すタイミングだからこそ、FUKUSHIMA Wheelを活用した無料レンタサイクルシステムの導入を提案したい」(山寺氏)。

マイナスイメージからの巻き返し

 山寺氏は、SF Japan Nightの本戦に臨んだ際、会津若松の伝統技術「金継ぎ」を施した自転車(FUKUSHIMA Wheel)を披露した。

 Eyes, JAPANは、創業18年になるが、震災前は海外の展示場やシンポジウムに行っても福島の地名を知る人は少なかったという。しかし、震災・原発事故を機に「福島(FUKUSHIMA)」の名は世界中に広まった。「今はまだマイナスのイメージが強いかもしれないが、世界中に広まった“FUKUSHIMA”の名を、マイナスイメージから巻き返して1つのブランドにまで高めていきたい」と山寺氏は語る。FUKUSHIMA Wheelに金継ぎを施したのは、その決意の表れといえる。幸いにして、米国のパートナー企業とシリコンバレーでジョイントベンチャーを立ち上げることも決定した。

 「やはり、『環境のためだ』とか、『安全のためだ』とか義務や強制したいわけではないんですよ。自分がやっていて、楽しいことでなければ誰も参加してくれないでしょう。自転車って、もともと身近で楽しい乗り物じゃないですか。近い将来、FUKUSHIMA Wheelを搭載した自転車をプラットフォームにして仲間と交流できたり、街中でロールプレイングゲームみたいなことができたりしたら面白いと思いませんか」(山寺氏)。



 Eyes, JAPANの企業サイトには、ビジョンとして『2001年宇宙の旅』で知られるSF作家アーサー・チャールズ・クラーク氏の言葉“Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic.(優れたテクノロジーは魔法と区別がつかない)”が掲げられている。テクノロジーで逆境の中から大きなビジネスを生み出そうとするEyes, JAPANのこれからに注目したい。


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