KORGがモジュラーシンセを再発明、「littleBits」向けキットを開発:音に触る、粘土をこねるように
電源、センサー、モーターなどのモジュールを磁石で組み合わせ、さまざまな電子回路を遊びながら学べる「littleBits」向けに、楽器メーカーのコルグ(KORG)は独自開発のアナログシンセサイザーをモジュール化したキット「littleBits Synth Kit」を販売すると発表した。
電源、センサー、モーターなどのモジュールを磁石で組み合わせ、さまざまな電子回路を遊びながら学べる「littleBits」向けに、楽器メーカーのコルグ(KORG)は独自開発のアナログシンセサイザーをモジュール化したキット「littleBits Synth Kit」を販売すると発表した。
littleBits Synth Kitは、シンセサイザーの基本モジュールをカチッカチッと積み木のように組み合わせ、すぐに音を出せるキットだ。
コルグは、ケーブルでパッチングすることで、さまざまな音色を作り出せるアナログシンセ「MS-10」「MS-20」を1978年に発売。最近では、再び評価されているこのシンセの“ソフトウェアシンセ化”に取り組み、iPadやニンテンドーDS/3DSなどのさまざまなデバイスへ移植したり、その機能を自社の超小型シンセに組み込んだりもしている。
組み換え可能なモジュラーシンセサイザー
MS-10とMS-20は、従来は「Moog III」などの大型で高価なモジュラー型シンセサイザーを安価に提供するものとして大ヒットしたが、今回発売されるlittleBits Synth Kitは、アナログシンセサイザーの要素をそれぞれ単独のlittleBitsモジュールにし、それらを相互接続可能にするもの。かつて、ケーブルでパッチングしていたやり方が、littleBitsモジュールを磁石でくっつける方式に変わった。
littleBitsは子どもにも使い方が分かるように、モジュールは青色が電源、緑色は出力、ピンク色は入力、オレンジ色はワイヤーというように、機能ごとに色分けされ、モジュールの接続は磁石で行う。磁石は、正しい方向以外は反発するようになっており、間違った接続ができないよう配慮されている。LEDや各種センサー、モーター、ブザーなどのlittleBitsモジュールが販売されている。
コルグのlittleBits Synth Kitは、littleBitsのハードウェア/ソフトウェア規格に準拠し、自社が持つアナログシンセサイザー技術を注ぎ込んだものだ。販売価格は1万6000円(コルグオンラインショップ価格)。オシレーター×2、フィルター、エンベロープ、13鍵キーボード、4ステップシーケンサー、ディレイ、ミキサー、ランダム(サンプル&ホールド、ノイズ)、スピーカー、スプリッター(分岐)、9V電池と電源が含まれる。
他のlittleBitsモジュールと組み合わせ、新たな楽器やガジェットも!
これらは、他のlittleBitsモジュールと互換性がある。例えば、LEDやモーショントリガーと組み合わせば、新たな機能を持った楽器や、全く異なるガジェットを作り上げることも可能だ。littleBitsモジュールのインタフェースはGitHubでオープンソース公開されており、コルグのlittleBits Synth Kitもその仕様に基づいている。独自のモジュールを作ってつなげることももちろんできる。
このシンセサイザーは、35年前のアナログシンセサイザーに源流を持つものだ。音色に変化を与えるフィルターは、MS-20後期型と同じ。ピッチベンドなどのエフェクトはこれだけではできないが、littleBitsの他のモジュールをつなげれば可能。
子どもたちがリアルタイムにどんどん組み合わせてエレクトロミュージックを奏でることができる。「音に触る、粘土をこねるように、積み木を積み上げるように作ってほしい」と、同社の坂巻匡彦氏は言う。
これまで、「KAOSSILATOR」「monotron」「volca」といったコルグのガジェット楽器を企画してきた坂巻氏は、littleBitsに注目し、2013年1月に渡米。現地で「littleBitsの音版を作りたい」と提案し、「すぐにやろう!」ということになったそうだ。
開発を担当した同社の高橋達也氏は、入社面接で自作シンセを持ち込んだ逸話の持ち主でもある。その高橋氏は「ラック式のモジュールより面白い。音質的にもすばらしいものができた」と胸を張る。
littleBits Synth Kitは同年12月中旬に発売予定。littleBitsの基本モジュール10個を組み合わせた「Base Kit」(1万1000円)、14個入りの「Premium Kit」(1万6000円)、18個構成の「Deluxe Kit」(2万1000円)も同年12月中旬に発売される予定だ。「Maker Faire Tokyo 2013」(開催日:2013年11月3〜4日)で展示され、人気を博した同製品。「Arduino」や「Raspberry Pi」と並ぶ、今後の自作ガジェット楽器の中心的存在となりそうだ。
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