新型「オデッセイ」はなぜ超低床化しなければならなかったのか:「アルファード」「エルグランド」と比較(2/3 ページ)
ホンダの新型「オデッセイ」は、全高を従来モデルの1545mmから150mm引き上げて1695mmとするとともに、超低床プラットフォーム」を採用。上級ミニバンとして競合する、トヨタ自動車の「アルファード/ヴェルファイア」や日産自動車の「エルグランド」と同等クラスの室内高さを実現した。
トーションビーム方式でも走行性能は維持
超低床プラットフォームでは、シャシー構造や床下の部品レイアウトを見直し、低床化を極限まで突き詰めたという。低床化を突き詰めるには、足回りのシャシー系システムに工夫が必要になる。特に後輪側に設置されるリヤサスペンションや排気システムを小型かつ薄型にしなければ、3列目シート部における広さや快適性に影響が出てしまう。そこで、リヤサスペンションは、容積をとらないトーションビーム方式を採用した。
低床化のためとはいえ、4代目以前のリヤサスペンションがダブルウィッシュボーン方式であったことを考えると、トーションビーム方式への変更は格落ちの感は否めない。しかし、ホンダの説明員によれば、「ダブルウィッシュボーン方式やマルチリンク方式のリヤサスペンションで低床化するのは難しかったので、トーションビーム方式を採用した。しかし、トーションビーム方式も進化しており十分な走行性能が得られると考えている。例えば、ホンダで走行性能を重視した車両の代表とも言える『シビックタイプR』も、リヤサスペンションはトーションビーム方式だ」と説明する。
さらに、走行性能を確保するためにSachs製の振幅感応型ダンパーを搭載している。ホンダが北米市場で展開している高級車ブランド「アキュラ」では、既におなじみになっている装備だが、ホンダブランドでは国内外含めて初採用となる。「車体の上層が大きい車両に最適なダンパーなのだが、最適なセッティングが難しい。アキュラでの運用実績もあって、新型オデッセイに導入できた」(同説明員)という。
また、部品の改良で特筆すべきなのは、薄型の燃料タンクだろう。4代目モデルの燃料タンクと比べて、厚さは約3分の2、約70mmの薄型化を実現した。
2列目ドアのステップ高さは300mm
新型オデッセイの車室内はどこまで広くなったのだろうか。4代目モデルとの比較図で見てみよう。
新型オデッセイは、外形寸法が全長4830×全幅1800×全高1695mm、室内寸法が長さ2935×幅1625×高さ1325mm、ホイールベースが2900mm。従来比で全長の伸びが30mmにもかかわらず、室内長が85mm、ホイールベースが70mmの増加となっている。全幅は従来と同じだが、室内幅は90mm広くなった。そして、全高を150mm引き上げて、超低床プラットフォームを導入したことにより、室内高さは105mm高くなった。
車室内の広さは、他の数値からも見てとれる。1列目シートと3列目シートのヒップポイント間の距離(タンデムディスタンス)は1850mmと、4代目モデルより155mm広がっている。着差時の膝回りのスペースを表すニークリアランスは、2列目シートで115mm、3列目シートでも35mm拡大した。荷室容量は、3列目シートまで乗員が乗っている場合でも、330l(リットル)を確保している。3列目シートを床下に格納すれば、荷室容量をさらに広げられる。
さらに、超低床プラットフォームの採用によって、2列目ドアのステップ高さが、4代目オデッセイよりも60mm、エリシオンよりも150mm低い300mmまで低くなった(運転席と助手席のステップ高さは370mm)。児童や高齢者でもスムーズな乗り降りが可能になるという。また、4代目モデルでは後部ドアが一般的なヒンジドアだったが、新型オデッセイでは、ミニバンの必須アイテムとなったパワースライドドアに変更。乗降性能の向上に一役買っている。
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