「マイクロソフトの存在感が薄れた今がチャンス」、QNXが国内展開に意欲:車載情報機器
QNX Software Systems(QNX)は、日本の自動車メーカーやカーナビメーカーに対して、同社の車載情報機器向けプラットフォームを提案する活動を強化している。QNXの自動車部門事業開発ディレクターを務めるAndrew Poliak氏は、「マイクロソフトの存在感が薄れた今がチャンス」と語る。
「カーナビゲーションシステム(カーナビ)をはじめとする車載情報機器市場において、これまで有力なプラットフォームベンダーだったマイクロソフトの存在感が希薄になっている今こそ、日本市場でQNX製品の採用を広げるチャンスだ」――QNX Software Systems(QNX)が2013年10月8日に東京都内で開いた記者説明会で、同社の自動車部門事業開発ディレクターを務めるAndrew Poliak氏が語った言葉である。
QNXは同日、光庭ナビ アンド データ(以下、光庭)が、日本の自動車メーカーやカーナビメーカーなどに供給しているカーナビ上で地図データの描画を行うナビゲーションエンジンについて、QNXの車載情報機器向けプラットフォーム「QNX CAR Platform for Infotainment」上で利用できるようになったと発表した。光庭の主要顧客には、日産自動車、日立グループ、東芝グループ、クラリオン、デンソー、エディアなどがあり、これらの企業は、QNX CAR Platform for Infotainmentを用いた車載情報機器を開発しやすくなる。
また、光庭が、中国市場で販売される日本や欧米、中国地場メーカーの自動車のカーナビについて、ナビゲーションエンジンだけでなくソフトウェア全般の開発を担当していることもあり、「中国市場におけるQNXの採用拡大も期待できる」(Poliak氏)という。
光庭の会長を務める鈴木健二氏は、QNXへの対応を決めた理由について、「車載情報機器のHMI(Human Machine Interface)をHTML5ベースにしようという動きが加速している。ナビゲーションエンジンを提供する当社としては、このトレンドに対応して、HTML5ベースのHMIからナビゲーションエンジンを簡単に利用できるような体制を整えておく必要がある。そこで、HTML5ベースのHMIのサポートを先行して進めてきたQNX CAR Platform for Infotainmentに対応することを決めた」と説明する。
グローバル市場の実績と比べて日本での採用は伸び悩む
Poliak氏は、「QNX製品を搭載する自動車の2011年のグローバル出荷台数は900万台。2012年には1100万台まで伸びた。自動車1台につき、QNXベースの車載システムが複数台搭載されているので、車載システムの出荷台数はこの数字の約2倍に上るだろう」と市場実績を強調する。
実際に、BMWやDaimlerをはじめ、欧米市場で販売されている自動車のカーナビやカーオーディオのプラットフォームとしてQNXは広く採用されている。さらに、2013年8月には、パナソニックが、グローバル展開する車載情報機器のソフトウェアプラットフォームとしてQNX CAR Platformを採用する方針を明らかにした。
ただし、日本の自動車メーカーやカーナビメーカーが日本国内で展開する車載情報機器への採用は思うように進んでいない。例えば、先述したパナソニックについても、日本市場向けのカーナビ「ストラーダ」でQNXを採用しているわけではない。
今回の光庭によるQNXへの対応は、この状況を打ち破る原動力となる可能性を秘めている。
かつて、PND(Personal Navigation Device)やスマートフォンが普及する以前、ハードディスクを搭載し始めたころのカーナビ向けプラットフォームとして、採用を一気に拡大したのがマイクロソフトの「Windows Automotive」だ(関連記事:Windows移行を決断したカーナビ開発の現場から)。しかし、日本国内にあったWindows Automotiveの開発拠点が米国に統合されるなどして、2010年以降はマイクロソフトの存在感は低下している。
QNXは、グローバル市場での採用実績に加えて、日本の自動車メーカーやカーナビメーカーにナビゲーションエンジンを納入する光庭の対応をきっかけに、“ポストマイクロソフト”を目指す考えだ。
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