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販売差し止めの実力行使も!? ――サプライチェーンを狙い撃つ米国違法IT規制法律家が見るサプライチェーンの知財侵害リスク(2)(2/3 ページ)

法律・知財の専門家が製造業のグローバルサプライチェーンに潜む課題と対策について解説する本連載。第2回では、不正な設計・製造ITに対する米国当局の規制とそれに伴う日系製造業のリスクについて紹介します。

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“本気”の取り締まりを見せる米国当局

 「まだ大丈夫」と思うかもしれませんが、不公正な貿易活動に対する法的措置は、カリフォルニア州、マサチューセッツ州、テネシー州、ワシントン州で既に取られています。つまり、既に取り締まりの対象になっているということです。今までの取り締まりの事例では、数万ドルから数百万ドルで和解するという結果になっています。

 これらの法律を執行する目的は、とてもシンプルです。「米国企業が自社の業務に使用するソフトウェアに対価を支払っているにもかかわらず、外国の競争相手がその対価を支払っていないために市場競争上の優位性を得て、米国における収入と雇用が失われる」ことを防ごうとするものです。

米国の違法ソフトウェア使用製造物に対する取り締まりの事例
米国の違法ソフトウェア使用製造物に対する取り締まりの事例(クリックで拡大)

 以上のことから、アジアにおける製造業のサプライチェーンにおいて、違法ソフトウェアの横行と言うしかない状況が、日本にどのような脅威をもたらすかお分かりになるでしょう。

知らなくても罪になる

 こういうシナリオを考えてみましょう。ある日本企業がA国、B国、C国から部品を調達し、日本かまたは他国にある工場の1つでそれらを組み立てています。輸出業者は知らないでしょうが、一部の部品が違法ソフトウェアを使って製造されているとします。

 その製品が米国に出荷され、そこでソフトウェアのライセンス所有者が、製品に使われた部品の一部が対価を支払われていないソフトウェアを使用して作られたことに気付き、州司法長官に対して当該製品を米国への入国地点で差し押さえるよう申し立てます。そうすると、輸出業者と輸入業者は連帯責任を問われ、他に輸入プロセスに関与した者があれば、その者も同様に罪に問われるのです。

 ここでポイントとなるのは「知らなくても罪に問われる」という点と「違法ソフトを使って作った部品が入っていれば、その部品メーカーだけでなく、完成品メーカーや販売店、輸入業者まで罪に問われる」という点です。

 その結果生じる損害の中でも、サプライチェーンの混乱、コスト、企業における信頼感(レピュテーション)の低下は、多くの企業にとって非常に手痛いものとなるでしょう。

日本の産業に及ぼす影響
日本の産業に及ぼす影響(クリックで拡大)

 実際、米国テネシー州で起きた最近の一例を挙げると、同州の州司法長官が、知財およびITの不正使用に関与した外国企業に対し、入国地点で差し押さえを行いました。実力行使は米国の州で4番目の事例となります。

 テネシー州へ輸出される自動車タイヤの製造過程において非正規のソフトウェアを使用していたことが発覚したからです。タイヤはアフターセールス市場向けのものでした。最終的には、罪を問われたタイの製造業者に対し、和解が成立したことが発表されています。

 しかし、考えてみてください。もしそのタイヤが日本ブランドの自動車にOEMとして装着されていたとしたら? 実際、その可能性だってあるはずです。

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