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富士通のPC工場、勝利の方程式は「トヨタ生産方式+ICT活用」小寺信良が見たモノづくりの現場(9)(2/5 ページ)

コモディティ化が進むPCで大規模な国内生産を続ける企業がある。富士通のPC生産拠点である島根富士通だ。同社ではトヨタ生産方式を基にした独自の生産方式「富士通生産方式」を確立し、効率的な多品種少量生産を実現しているという。独自のモノづくりを発展させる島根富士通を小寺信良氏が訪問した。

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「富士通生産方式(FJPS)」の確立

 島根富士通の生産革新活動は自主活動として2003年からスタートしたが、2005年には本格的な革新手法として、「トヨタ生産方式(TPS)」を導入した。ご存じのように自動車製造はライン製造であり、多品種少量生産が主体のPC製造には向かないのではないかと思われている。しかしここに独自の創意工夫を組み込んだ「富士通生産方式(FJPS)」を確立することで、大きく改善が進んだ。

 まず改善した点の1つは、トヨタ生産方式の代表的な要素ともいえる「ジャストインタイム(JIT)生産システム」の導入だ。これは“必要なものを、必要な時に、必要な量だけ生産する”という考え方である。

 PC製造は、主にマザーボードをはじめとするプリント基板製造工程と、そこにさまざまな装置を取り付けて製品として組み上げていく組み立て製造工程に分けられる。プリント基板製造はほとんどが機械化されているが、例えば基板の表面実装、裏面実装、検査、加工、試験といった工程を経て、組み立て製造に回される。

1階のプリント基板製造ライン。奥から手前に向かってラインが流れる
1階のプリント基板製造ライン。奥から手前に向かってラインが流れる(クリックで拡大)

“カンバン”方式の効果

 2005年以前のプロセスでは、いわゆる「押し込み」(プッシュ型)と呼ばれる方法で製造されてきた。工程の前の方から後の方に向かってどんどん押していく方法だが、各工程の処理時間が均等ではないため、どこかでバッファとしての“待ち”が生まれる。もちろん日々需要に応じた量を製造することには違いないが、この方法では各工程の合間合間に、仕掛品が大量に発生することになる。

 ジャストインタイム生産システムでは、これを「後工程引き取り型」(プル型)に変えていく。これは、後の工程が前の工程に対して「そろそろ足りなくなりそうだからあとこれだけ作って」というリクエストを出す。つまり、後ろの工程が前の工程の製造ペースをリードしていくスタイルだ。

 これには、“カンバン”と呼ばれるカードを利用している。後の行程がこのカードを使って、前工程に10個単位で発注をかける。前工程はこのカードを先頭にして、10個の仕掛品をラインに流していく。後工程はカードを先頭にその10個を処理し、カードが後工程の末端に到達すると、それを前工程に戻してまた10個発注する、といった具合にぐるぐる回していく。もちろんリードタイムの細かい調整は必要だが、これによって工程間の仕掛品の発生を激減させることに成功した。

工場内で使用されている“カンバン”
工場内で使用されている“カンバン”(クリックで拡大)

 これはプリント基板の生産工程にクローズアップした例だが、組み立て工程での物流管理も、プッシュ型からプル型に転換した。プッシュ型では、入荷した部材を倉庫に入れ、そこから本日製造分を出庫し、トレイに配膳する。ラインへは、トレイ置き場からまた出庫し、ラインにセットするなど、工場内で頻繁に入庫と出庫を繰り返し、その分だけ紙の伝票が発生し、仕分け作業や運搬といった工数も掛かっていた。

 これをプル型に転換することで作り過ぎも排除でき、オペレーションがシンプルになるために中間工程で必要だった伝票処理や工数も削減できる。ラインへ部材を供給するためのピッキング作業は、製造スケジュールに沿って棚のRFIDタグを読み取りながら、必要な部材を必要な個数だけピッキングすることで、誤出庫を防止する。

通称“ミズスマシ”と呼ばれるピッキング作業者。RFIDタグで部品を照合しながらワゴンに積んでいく部品トレイに付けられたRFIDタグ 通称“ミズスマシ”と呼ばれるピッキング作業者。RFIDタグで部品を照合しながらワゴンに積んでいく(左)、部品トレイに付けられたRFIDタグ(右)(クリックで拡大)

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