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働くロボットの森――ソーラーフロンティア、量産効率で勝つ21世紀型国内工場の姿小寺信良が見たモノづくりの現場(8)(4/5 ページ)

大量生産モデルでは日本の製造現場は中国やASEANに勝てない――。そんな通説に真っ向から挑んでいる太陽電池メーカーがある。ソーラーフロンティア宮崎第3工場(国富工場)だ。ロボット化と人手によるバランスを追求した新たな国内工場の姿を小寺信良がお伝えする。

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合理的に人と機械を組み合わせる

 製造を行う建屋の隣には、自動倉庫がある。相当な高さまで同じサイズの棚が積み重なっており、全部で6000棚あるという。ちょっと気の利いた照明を当てれば、そのままSF映画のセットに使えそうである。

 この棚は、部材となるガラス板と完成した太陽電池パネルが、混在して置かれている。部材と製品サイズがほとんど変わらないからできることだ。どの棚に何が入っているかは全てコンピュータが管理しており、部材の取り出し、完成品の収納も全て自動化されている。実際の運搬は、ガラス基板を運搬するのと同じ自動台車が全て行う。

部材と製品を一緒に管理する巨大な自動倉庫
まるでSF映画? 部材と製品を一緒に管理する巨大な自動倉庫(クリックで拡大)

 コンピュータ管理にすることで、どの棚からどういう経路で取り出したら一番早いか、といった効率化も可能になった。倉庫のスペース効率が飛躍的に上がる他、市場のニーズに合わせて製品在庫を増やしたり、連休中は部材が搬入されないためその前に多く部材を溜め込んだり、といったフレキシブルな運用ができるという。

部材を運び終えた台車完成品を運ぶ台車 部材をラインに運び終えた台車が次々と帰ってくる様子(左)と、同じ台車が完成品を運んできたところ(右)。動きはかなり速い(クリックで拡大)

人間がやると時間がかかることは全て機械化

 人間がやると時間がかかること、人間にやらせるべきではないことは、全て機械化するという合理化が図られている。例えば、最終検査後の製品シール貼りに至るまで、ここでは当然のごとく機械化されている。このような単純作業は、人間では苦痛に耐えられないからである。もちろん部材を持ち上げる、ひっくり返すといった重労働もそうだ。

 機械は与えられたタスクを延々とこなすだけだが、それ以外のことはできない。何かあったときの判断や対応、「何かおかしい」といった違和感に気付いたり、これまでになかった新しい問題点に気付くことができるのは、人間だけである。ここではそのような役割を、人間が担当する。

 さらに合理化という点では、完成品のパネルはダンボールに入れたりしない。コーナーピースという樹脂製の部材で角を保護すると同時に、このコーナーピースで製品を積み重ねられるようになっており、25枚セットでラッピングしたものが出荷される。

コーナーピースで重ねられた完成品
コーナーピースで重ねられた完成品(クリックで拡大)

 これは現場で大量のダンボールや発泡スチロールといったゴミを出さないため、好評だという。メガソーラーともなれば、数千枚単位のオーダーとなるため、いちいちダンボールに入っていたら大変なことになる。またこのコーナーピースは他に使い道もないことで、返却率が非常に高く、リユースできる。積載率も従来方式に比べて312%も向上しており、非常に効率のよい仕組みとなっている。

 環境にやさしいことが評価を受け、この方式は日本物流団体連合会が実施している「平成24年度第13回 物流環境大賞」において特別賞を受賞した。もちろんコーナーピースの取り付けも、完全自動化である。

遠くにコーナーピースの取り付けロボットが並んでいるのが見える
遠くにコーナーピースの取り付けロボットが並んでいるのが見える(クリックで拡大)

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