世界レベルの戦いはかくも厳しい――それでも東大チームの挑戦は続く:フリースケール・カップ世界大会(3/3 ページ)
ロボットカー競技会「The Freescale Cup(フリースケール・カップ)」の世界大会には、総計約1000チームの中から予選を勝ち抜いた9カ国の代表が参加した。前日練習の際にアウェーの洗礼を受けた日本代表の東大チームだが、本戦の結果はどうなっただろうか。
あっという間に終わった東大チームのレース
中国代表の結果を受けて、観衆である中国人学生のざわめきが収まらない中、5番目に走行したのが日本代表の東大チームである。
各国チームを構成する3人の学生のうち、コースにロボットカーを設置するなど、競技の最終的な責任者となるオペレーターを務められるのは1人だけだ。残りの2人は、コース外から見守ることになる。
東大チームのオペレーターは、フリースケール・カップに関するプロジェクトのリーダーを務めたKounakis Ioannisさんである。しかし、直前に走行した中国代表の圧倒的な記録や会場内のざわめきもあって緊張してしまい、ロボットカーのスタート位置を、スタートラインからかなり後ろに下げてしまったのだ。
ロボットカーのスタート位置を後ろに下げれば、速度を上げた状態でスタートラインに入れるので、走行タイムを短縮できる可能性がある。できるだけ早く走行させたいIoannisさんは、東大チームより走行順が前のチームも行っていた、スタート位置を後ろに下げるという手段をとることにした。
しかし、東大チームのロボットカーは、ある程度の距離を走行してからゴールライン(兼スタートライン)を横切ると停止するというアルゴリズムを用いていた。スタート位置を後ろに下げ過ぎてしまった東大チームのロボットカーは、このアルゴリズムが働いて、スタートラインを横切ったと同時に停止してしまった。
2回目のトライアルでは、スタート位置を前に戻したものの、最初のカーブでコースアウト。東大チームは、競技コースをほとんど走行させることなく、記録なしという結果に終わった。
東大チームの後に走行したチームについては、記録だけ紹介しておこう。東大チームと同じボレロボードを使用したブラジル代表は19.57秒。前日練習に参加できなかった台湾代表は19.08秒。ボレロボードを使用するインド代表とメキシコ代表は、2回のトライアルともコースアウトし、記録なしとなった。
悔しい経験を今後に生かす
レース結果は、中国代表が優勝で、2位がマレーシア代表、3位が台湾代表となった。上位3チームは、フリーダムボードを使用していたわけだが、4位にはボレロボードを使用したブラジル代表が入った。5位は米国代表、6位はEMEA代表。日本代表の東大チームとインド代表、メキシコ代表の3チームは記録なしとなった。
今回のフリースケール・カップ世界大会は、東大チームにとっては悔しい結果になった。日本大会の予選から、東大チームのロボットカーの走りを見続けてきた筆者にとっても記録なしは予想外のことだ。
しかし、さまざまな研究活動で忙しい中、日本代表としてフリースケール・カップ世界大会に参加した東大チームには敬意を表したい。
Ioannisさんが所属する東大の坂村・越塚研究室では、2013年のフリースケール・カップ日本大会への参加を予定している後輩が、新たなロボットカーの開発を進めている。Ioannisさんは、今回の悔しい結果も含めて、自身の経験を後輩に伝えるつもりだ。
関連記事
- これがアウェーの洗礼か――東大チームがフリースケール・カップ世界大会に挑む
ロボットカー競技会「The Freescale Cup(フリースケール・カップ)」の世界大会に参加した東大チームを待っていたのは、アウェーの洗礼だった。 - 上位3チームがデッドヒート! 「フリースケール・カップ」決勝は手に汗握る展開
2012年10月22日、大学生と高等専門学校(高専)生を対象にしたロボットカー競技会「The Freescale Cup(フリースケール・カップ)日本大会」の決勝が開催された。上位3チームがデッドヒートを繰り広げるなど盛り上がりを見せた決勝レースの模様をリポートしよう。 - ロボットカー開発は難しい――第1回「フリースケール・カップ」予選から
大学生と高等専門学校(高専)生を対象にしたロボットカー競技会「The Freescale Cup(フリースケール・カップ)日本大会」の予選が、東海大学高輪キャンパスで開催された。15チームが参加した同大会の結果から、自律走行するロボットカーの開発の難しさが垣間見えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.