半抜きを使う「板金スマートテクニック」:甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(15)(1/3 ページ)
今回は、半抜きを使った板金設計テクニックを紹介する。過去に学んだことも活用して“スマートな”設計をしよう!
当連載の登場人物
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
沢田恵梨香(さわだ えりか)
ADO製作所 PC事業部 設計2課に勤務する派遣社員。良君のい〜加減な設計を製図でしっかりフォローする優秀な設計アシスタント。製図専門学校卒。通称、エリカちゃん
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
今回も、この言葉から始めます。
「『料理を設計、料理人を設計者』に例えて解説します。どちらも職人がなすことなのでよく理解できるから」――これは、筆者が学生やクライアント企業に対してよく使うせりふです
機械工学や機械設計や生産技術に関して、その知識を自慢する技術者がいます。確かに、機械工学という学問は難しいかもしれません。しかし、機械の設計実務は簡単です。
それは、前回の表1、つまり、「料理人と設計者の職人としての相違」で明らかにしました。
料理人と設計者には、大きな違いがあります。もし異議を唱える技術者がいたら、筆者は最難関の食品といわれている発酵食品で、その技術の深さを説明するでしょう。例えば、テレビに登場するような各職業の匠は確かに凄腕と聞きます。しかし、科学が進んだこの21世紀でも、「発酵食品」、つまり、味噌、しょうゆ、日本酒、ワイン、ビール、チーズなどの成分分析や工程分析は困難なのです。
料理人と比べれば、機械設計者の実務は決して困難ではありません。多くの若き技術者に機械設計という職業を経験してほしいと思います。
「設計職人」を目指す場合、まず良君のような基礎学力(学問)、そして、エリカちゃんのような実務知識を固めることです。建築物でいう礎石です。それで初めて、3次元CADやCAE、3Dプリンタなどハイテク技術が生きてきます。
ところでよぉ、「バンバン板金設計」ちゅうくらいだから、ずぅ〜と板金設計の単品ノウハウばかりを伝えてきたがよぉ……。
えっ? 甚さん、「板金設計の単品ノウハウばかり」では、何かまずいのですか?
オメェなぁ〜、「パスタしかできねぇイタリアンシェフ」「フォアグラしかできねぇフレンチシェフ」「麻婆豆腐しかできねぇ中華料理人」がいるかってんだ。オメェら、機械設計者はどこか甘いんじゃねぇかい、あん?
そんなことないですよ。設計者だって立派な人がいますよ。
だったらよぉ、そいつの名前を言ってみろ。日本の設計者が「プロジェクトX」に出演したか? あん? プロジェクトXに出演した技術者は、研究者と生産技術者だけだ。どうだ、まいったか?
そういえば……。設計者で「巨匠」とか、「匠のワザ」とか呼ばれるのは、あの「劇的ビフォーアフター」とか、テレビに出てくるような建築家たちだけですね? 何か、かなしいなぁ……。
実は、1人だけいる。いや、存在していた。それは、堀越二郎さんだ、あの宮崎駿さんの映画「風立ちぬ」の主人公だぜぃ。
そうっ! 知っています。堀越二郎さんは、零式戦闘機、通称「ゼロ戦」、もしくは、「零戦(れいせん)」の設計者でしたね。
あったりめぇよ!
そうそう、これこれ。かっこいいっすね!
今、有名な設計者というと、日産スカイラインの生みの親である桜井眞一郎氏か、零戦の堀越二郎氏しか頭に浮かばないのは筆者だけでしょうか?
零戦を「戦闘機」や「兵器」と表現すると、ちょっと扱いが難しい面もありますが、今回はあくまで、世界でも評価されている「美しいフォルムの“航空機”」の例ということで、どうかご理解ください。
>>過去、甚さんが零戦について解説した記事「零戦の要求仕様の優先順位を考えようじゃねぇかい! 」
いいか、分かったか。機械設計っていうのは、板金設計だけじゃ、オメェ、飯は食えねぇってもんよ。
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