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目指したのは多品種少量生産体制の確立――原価見える化を求めた白鳥製薬製造IT導入事例(2/2 ページ)

少品種大量生産から多品種少量生産へ――白鳥製薬は市場環境に対応するために多品種少量生産への脱皮を図ろうとしていた。限られたリソースで拡大する製品ポートフォリオを評価するためにはシステム導入が必要になる。しかし、白鳥製薬には約5年前に基幹システム導入を試みて失敗した苦い記憶があった。

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「標準」でやる

 白鳥悟嗣氏が責任者となり、新システム導入への動きは大きく進み始めた。白鳥悟嗣氏が新システムにおいて明確にしたのが「標準機能で使えるパッケージシステム」ということだった。

 白鳥製薬の基幹システム(販売管理サブシステム、生産管理サブシステムなど)および本社系システム(給与計算システム、人事管理システムなど)はIBMのオフィスコンピュータ「AS/400」上に内製で構築されていた。また現場の在庫管理、入荷管理、出荷管理などはEXCELを利用していた。ただ、今後継続的な保守費用や開発費用などを考えると、内製は難しくパッケージシステムの採用は選択の余地のない状況だった。さらにパッケージシステムを導入する場合でも、短期導入とコスト低減を実現するには、できる限りカスタマイズを行わず、標準機能で利用できるようにする必要がある。

「標準にこだわった」と白鳥氏は語る
「標準にこだわった」と白鳥氏は語る

 白鳥悟嗣氏は「従来はAS/400のシステムに合わせて業務を行ってきたが、システムの能力に制限を受け、業務を行う中で非効率な部分が多くあった。新システムでは、導入実績が多くフィードバックなどを得られているパッケージシステムを標準導入することを目標に据えた。ただ、そのためには標準機能でのカバー範囲が広いパッケージシステムを探す必要があった」と話す。

 これらの観点から、「製薬企業の導入実績が多く提案内容が充実していた」(白鳥悟嗣氏)ことを評価し、販売管理、生産管理、原価管理では、東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の「MCFrame」を、会計、人事給与、固定資産についてはSCSKのProActiveE2を、提案してきたインテックを起用することを決めた。

以前のシステム新システム 今までのシステム構成(左)とパッケージでカバーする新システムの概要(右)(クリックで拡大)

9カ月での本格稼働を実現

 導入事業者決定後の2011年12月にキックオフミーティングを実施。その後会計や原価管理、在庫管理、マスター管理などの1次ステップ分は2012年8月に稼働を実現したという。通常基幹システムの導入には数年かかるケースも多いが、わずか9カ月での導入となった。この後2013年3月にかけて、給与計算や人事管理、固定資産・リース資産管理などのシステムも稼働し、当初計画のシステムの稼働に成功した。

 白鳥悟嗣氏は「目標とする期日に本格稼働させることができたが、必ずしも順風満帆だったわけではない。認識のずれや要件定義の遅れによるスケジュール変更、マスターデータの登録やチェックに苦労し、『期日通りに本当にできるのか』と頭を抱えた時もあった。その中でも社内各部門をはじめ、インテックと一体となって全員で取り組めたことが結果につながった」と話す。

新システム移行へのスケジュール
新システム移行へのスケジュール

 導入効果もさまざまな部分に現れている。従来システムではデータ連携が行えなかったために各システムへの入力が必要で、同じデータを最大で4回入力しなければならない状況が発生していたが、新システムは1回入力すると各システムが連携し入力の手間は4分の1に削減することができたという。また、原価の可視化が行えるようになったため、月次決算に従来約20日かかっていたのを、10営業日以内に行えるようになったとしている。

 「入力が容易になったことで発生源に近い入力が可能になり、生きたデータが活用できるようになった。入力時間の削減の他、リアルタイムに近い形でさまざまな経営判断が下せる体制になってきた」と白鳥悟嗣氏は効果を評価する。

重要なのは「誰が責任を取るのか」

 白鳥悟嗣氏は短期導入を実現できた要因として「システム化の目標を明確化したこと」「社員の意識改革」「リーダーシップ」「一体感の醸成」の4つのポイントを挙げる。

 「システム化の目的を『原価管理』に絞り込み、標準機能を中心とする、という2つの目標にぶれずに押し進めることが成功の要因になったと思う。それには、トップとして明確に『私が責任を取る』という姿勢を示し、各部門の調整を取っていくことが必要だった。結果として社員の意識も変わってきた。また『やらされている』のではなく、一体感を作り上げることができたことは、今回のシステム導入だけでなく今後の事業運営にもつながってくると感じている」(白鳥悟嗣氏)。

 今後はさらに、2013年秋口から標準原価管理を新たな機能として加え、主力製品であるカフェインで導入試験を開始する予定だという。2014年には品目数をさらに拡大し3〜5品目で標準原価管理による分析を行う計画だ。またさらにMRP(Material Requirements Planning、資材所要量計画)の導入準備も進めていく。

 白鳥悟嗣氏は「今後は海外生産なども検討しており、多品種少量生産への移行と合わせ、個々の製品の原価管理は欠かせないものになってきている。システムを活用して可視化を進めることで生産品目の入れ替えや設備投資の判断などをより高精度に行えるようにし、さらなる収益性の向上を実現していきたい」と話している。

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