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時代を変える「革新者」に共通する3つの着眼点とは?――NRI2030年研究室製造マネジメント インタビュー(3/3 ページ)

野村総合研究所(以下、NRI)では2030年につながる次世代ビジネスの研究をテーマに2012年9月に「2030年研究室」を設立。次世代につながる良質な仕事を生み出す「革新者」たちへのインタビューを行っている。NRI2030年研究室室長の齊藤義明氏に革新者および今後のビジネスに必要なものについて聞いた。

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マイナスの価値をプラスに反転させる

 2つ目の着眼点は「マイナスの価値をプラスに反転させる」ということだ。

 例えば、「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」は、真の暗闇で8人のチームを組み、視覚障害者の導きの中、音や匂い、味、温度、感触などを体験するドイツ発祥のソーシャル・エンターテイメントだ。日本でも1999年から開催されており年々人気を高めているという。齊藤氏は「視覚障害者を『周りの助けを必要とする弱者』として、マイナスにとらえていたのを、『研ぎ澄まされた感覚を持つ暗闇のエキスパート』としてプラスの価値として提供することで、新たな価値を生み出したことが画期的だ」と説明する。

ダイアローグ・イン・ザ・ダークのサイト
ダイアローグ・イン・ザ・ダークは真の暗闇の中で活動するエンターテイメント。ドイツ発祥で日本でも人気が高まっている(クリックでサイトへ)

 また「バリアフリー」ではなく「バリアアリー」を提唱するデイケアセンター「夢のみずうみ村」もプラスとマイナスの価値を反転させた例だと齊藤氏は話す。「従来障害物は高齢者にとってマイナスのものだったが、逆に健康を支えてくれるプラスのものと捉え、施設には数多くの障害物が用意されている」(齊藤氏)。

 「こうした全く正反対な価値の反転を見ていると、あらゆるところにビジネスのチャンスは残されていることに気付く。日本経済は今までと比較して失われるものを示し、現状を嘆く風潮が強いが、革新者たちは過去に比べて失われるものや減るものは気にしていない。これから増えるものに着目しビジネス創造を進めていることが特徴だ」と齊藤氏は話す。

 さらに日本は、高齢化や社会保障問題など多くの社会課題の先進国であり「これらの“増えるもの”に対し問題解決ができれば、今後同様の問題に苦しむ海外の国々に提供することも考えられる」(齊藤氏)。

やり切ってどんどん進化させる

 3つ目の着眼点は「やり切ってどんどん進化させる」ということだという。齊藤氏は「革新者たちは“連続起業家”としての面を持っている。1つの事業の先、またその先に続けて新たなビジネスを構築していく。既存のビジネスを次々に打破していく突破力が特徴的だ」と説明する。

ワンコイン健診
「ワンコイン健診」を行うケアプロ。自己採血方式を編み出し課題を突破した(クリックでサイトへ)

 例えば、ケアプロは、日本に3300万人いるといわれる健診弱者(健康診断を受けられない人)に向け500円という価格の「ワンコイン健診」を提供している。しかし当初500円という価格を実現するためには「採血」が課題になったという。採血は医師をそばに置くことが義務付けられている。しかし、医師を何人も雇用すると500円という価格は実現できない。そこで試行錯誤を経て、受診者が自分で手に針を刺し血液を採取する自己採血方式を生み出した。自分で針を刺すのは医療行為ではなく自傷行為となるため、この課題を突破できたという。

 齊藤氏は「革新者たちは数々の障壁があってもさまざまな挑戦を続け、諦めずに突破する方法を編み出している」と強調する。

2030年研究室が目指すもの

 2030年研究室では、これらの革新者たちのインタビューを通じて得た成果を抽出しフィードバックすることで新たな革新者を生み出していくとともに、これらの革新者たちを結ぶことで、新たな価値創造につなげていく計画だという。

 齊藤氏は「イノベーションは同じ業界や同じ環境の中では起こらない。異なる領域が合わさることで生まれる。革新者同士や企業を結ぶ触媒となり、新たな革新に貢献してきたい」と話している。

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