「なぜ」の答え持ってますか?――LINEも、ロボットスーツも、iPS細胞も、革新を呼ぶ鍵は動機:そこに山があるから?(2/2 ページ)
在日米国商工会議所(ACCJ)がイノベーションをテーマにしたパネルディスカッションを実施した。日本網膜研究所社長の鍵本忠尚氏、CYBERDYNE社長の山海嘉之氏、LINE社長の森川亮氏、一橋大学教授の米倉誠一郎氏など第一線で活躍するパネラーが登壇し、イノベーションを生み出す秘訣などについて語った。
足りないものは作ればいい
山海氏も「重要なのは何を起こしたいかだ」と言う。CYBERDYNEは、山海氏が筑波大学大学院システム情報工学研究科で研究していた成果をより広く世の中の普及させるために2004年6月に設立。人が筋肉を動かそうとするときに発生する微弱な生体電位信号をセンサーで読み取り、その信号を基にパワーユニットを制御して動かすサイボーグ型ロボット「ロボットスーツHAL」の開発で有名だ。
「病気やけがをした際の機能回復や、原発事故など不自由な環境で重作業を行わなければならない場面など、そういう人たちのサポートを行いたいというところからロボットスーツの開発をスタートさせた。何を起こしたいか、ということを考えれば『足りないものが今ないのであれば作る』という発想になる。イノベーションの種はそうした中から次々出てくる」と山海氏は話す。
ロボットスーツHALの開発でも、センシングする神経信号は神経が切れていると受信できないため、切れた神経細胞を再建するための培養を行うなど、生物学の領域にまで踏み込んだ研究を行ったという。
LINEのきっかけの1つは東日本大震災
「LINEを作ったきっかけの1つは東日本大震災だった」と語るのは森川氏だ。LINEは、リアルタイムのコミュニケーションを行えるネットワークサービスだが、東日本大震災でネットワークを通じて家族や友人が連絡を取り合う様子から開発をスタートさせたという。スマートフォンというプラットフォームでベストのコミュニケーション基盤を考えて開発を進行。電話番号による簡単な登録、クローズドネットワーク、日常のコミュニケーションに特化しスタンプなど「感情を伝える」機能を充実させたことなどが評価を受け、現在全世界で1億9000万人もの利用者がいるという。
「イノベーションとは社会的問題を解決することで、それは技術に限ったことではない。LINEは既存の技術を組み合わせたサービスモデルだ。最終的には顧客に何を届けるかということが最も重要だ。例えば私が以前所属していたソニーでは、顧客にとって一番気持ちのいい形状のモックを作り、そこを起点に商品開発を進めていくのが当たり前になっていた。そもそも日本は革新的なモノづくりが得意だったはずなのに、それをいつの間にか見失ってしまったということだと思う」と森川氏は語っている。
米倉氏は「日本にはイノベーションの種は数多く存在する。それを世に送り出すためには、外的規制と内的規制を打破しなければならない。外的規制は国や既得事業者などが作る規制だ。これらを緩和すれば新たなビジネスの芽が数多く出てくる。内的規制は社内で新しい何かをやるということを阻む組織になっているという問題だ。今大企業のリストラが大きな問題になっているが、これは見方を変えれば人材の解放だともいえる。生き生きと働くチャンスだと考えて、自分がやりたいことをやることがイノベーションにもつながる」と述べている。
世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」
世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。
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