ついに決まった事業撤退。そのとき、製造業エンジニアの身の振り方は?:製造業エンジニア、転職活動の心得(2/2 ページ)
大手メーカーの事業撤退を報じるニュースが珍しくなくなってきた昨今。起こってほしくない事業撤退ですが、逆境をポジティブにとらえることでチャンスに変えた製造業エンジニアもいるのです。
キャリアアップを求め、1度目の転職
山本さん(仮名)は大学卒業後、国内の大手メーカー系のソフトウェア製造を行う企業に入社しました。同社では、FA機器向けのソフトウェアを中心に開発を行っていました。通信系のプロジェクトを中心に経験していく中で、最終的には開発リーダーとして要求仕様の定義、コスト見積もり、スケジュール管理、外部設計を行うまでになったのです。
しかし入社から数年がたち、責任のある仕事が増えてきたはいいものの、年収が上がる気配はなく、子会社の限界を感じ始めていました。こうして入社から4年がたったころ、転職を決意しました。
山本さんの転職活動はスムーズでした。語学力に自信のあった山本さんは外資系企業を中心に転職活動を行いました。開発リーダーとして、マネジメントを行った経験や通信系の開発を行った経験が評価され、念願の外資系メーカーに転職が決まりました。もちろん年収もアップしました。
配属された部署では、いろいろな国から集まるメンバーとプロジェクトを進めるチャンスに恵まれました。英語が母語でない者同士で話すこともあり、意思の疎通が難しいこともありましたが、身振り手振りのコミュニケーションを取りながら業務を進めていきました。さまざまな文化のバックグラウンドを持つメンバーとコミュニケーションを取ることを楽しみながら、プロジェクトを進めていったわけです。
あるプロジェクトでは、最新の技術に関する開発を担当することになりました。その中で、アーキテクチャを構築したり、プロトタイプ機のファームウェア開発に携わったりすることになりました。前例のない中から物を生み出すという行為は、大変ではあるものの、やりがいのある仕事でした。
事業撤退をチャンスと考え、2度目の転職
転職先の環境にも慣れ、充実した毎日を送っていた山本さん。しかし、入社して3年くらいしたある日、山本さんの所属する部署の事業撤退が発表されました。
山本さんは、これを機に2度目の転職を考え、人材紹介会社に登録しました。私が山本さんにお会いしたときの第一印象は「おとなしい人」でした。しかし、話していくうちに、いろいろな経験について伺うことができました。
特に印象的だったのは、1社目でコールセンターの対応を行っていた、というエピソードです。エンジニアの中には、コールセンターの対応を避けたいと考える人が多いのではないでしょうか。しかし、山本さんは「顧客の生の声が聞けるから」と積極的に仕事に取り組み、楽しんでいたとのことでした。
コミュニケーション能力の高さや前向きな姿勢が高く評価されたのか、数社応募したうち、大手メーカー2社から内定をもらいました。前回の転職でも年収がアップしましたが、最終的に入社を決定した会社では、さらに80万円近くアップした提示を受けることができました。現在も、いままでの経験や知識を生かしながら、やりがいのあるプロジェクトを進めているとのことです。
偶然をキャリアアップに生かすための5つの資質
こうして山本さんは、事業撤退という出来事をチャンスに変え、年収アップ・キャリアアップを実現しました。しかし、誰しもが山本さんのように前向きに行動できるわけではないでしょう。どのような心構えがあれば、事業撤退という逆境をチャンスに変えることができるのでしょうか。
前出のジョン・クランボルツ教授によれば、偶然の出来事を前向きに生かすためには以下の能力・資質が必要とされています。
- 好奇心
- 持続性
- 前向きに考える力
- 柔軟性
- リスク・テイキング
あなたは「事業撤退」という偶然の出来事を、チャンスと考えて行動できますか?
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