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日本と外国との“文化の違い”を“数値”で把握 〜オフショア開発とご近所付き合い〜山浦恒央の“くみこみ”な話(54)(1/2 ページ)

オフショア開発は、海外(外国人)に発注するから難しいのではなく、他人に発注するから難しい――。新シリーズでは、「オフショア開発とコミュニケーション問題」を取り上げる。まずは、日本と外国との文化の違いを数値で把握してみよう。

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山浦恒央の“くみこみ”な話

 ソフトウェア開発で、最も人件費が高い国はアメリカと日本です。生産性の改善には限度がある、というより、この40年間で生産性はほとんど上がっていません。そのため、ソフトウェア工学による生産性向上策に絶望した企業が、“即効薬”として飛びつくのが、インドや中国をはじめとした海外に発注する「オフショア開発」です。

 オフショア開発の成否を分ける最大のポイントは何か。それは、異文化コミュニケーションの問題を解決することにあります。そこで、今回から新しいテーマとして「オフショア開発とコミュニケーション問題」を取り上げます。

 オフショア開発を経験した人が必ず感じるのは、“コミュニケーションの難しさ”です。取引先が外国人の場合、なかなか自国の開発プロセスを完全に理解してもらえません。言ってみれば、隣の家の住人や、結婚相手の家族との関係みたいなものでしょう。

 新シリーズの第1回では、日本と外国との“文化の違い”を“数値”で把握してみようと思います。

1.自分以外は全て異文化

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 私たちは、無意識に人間をカテゴライズする傾向にあります。例えば、高学歴者が仕事で失敗すると「何だよ! ○○大学のくせに使えないなぁ……」とボヤいたり、買った電子機器が直ぐ壊れると「まぁ、○○製だからなぁ……」と考えたりしたことはありませんでしょうか。「異文化」と聞くと、“外国人とのやりとり”と考えがちですが、そうではありません。外国人に限らず、自分以外の人とのコミュニケーションは、全て、異文化コミュニケーションです

 外国人と日本人との文化的な差異が大きいのは当たり前のことです。しかし、日本人同士、例えば“隣の住人”であっても、宗教、支持政党、食習慣、衣服など、さまざまな点で違いがあります。重要なのは、オフショア開発の問題を「中国人だから……」「インド人だから……」という“偏見”をベースに考えるのではなく、「(自分以外の)他人とのコミュニケーションの問題」という視点で考えることです。

2.日本ではクレーム、外国ではノープロブレム

 以前、シンガポール育ちの友人であるA君とこんな会話をしたことがありました。

A君:シンガポールでボールペンを買うと、10本に1本はインクが出ないんですよ。


私:それってひどくないですか?


A君:私の国ではそれが当り前なので全く気になりません。高品質のボールペンが欲しいときは、百貨店に行きますよ。


私:……。



 日本の場合、購入したばかりのボールペンのインクが出なければ、不機嫌な顔をして購入した店へ返品しに行きます。これに対し、東南アジアには“商品を返品する”という習慣がありません。スーパーで買った果物が原因で食あたりを起こしても、訴えないそうです。万一、日本で同じことが起きたら、訴訟問題に発展するかもしれません。

 ソフトウェア開発でも、国によって品質基準や環境条件が異なります。例えば、エアコンの場合、日本では静かな運転音が求められますが、アジア地域では逆に音が大きくないとダメだそうです。これは、エアコンが壊れていないかどうかを運転音で判断するからです。日本では、うるさい動作音のエアコンはクレームの対象になり、最悪リコールになるかもしれません。つまり、日本のバグは他国では正常、また、その逆のケースもあり得るのです。

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