第23回 EMIの原理と対策:前田真一の最新実装技術あれこれ塾(3/3 ページ)
実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第23回は、任天堂の最新ゲーム「Wii U」を例にとりながら、EMIの原理と対策について解説する。
5. EMC対策
EMC対策としては電磁放射ノイズを受けても機器が誤動作を起こさないEMS対策と機器が装置の外部に電磁放射ノイズを放出しないEMI対策の2つがあります。
EMIでもEMSでも、基本的対策は
- ノイズを出さない回路にする対策
- ノイズを放出、受信するアンテナを作らない対策
- 装置内にノイズを出さない/入れない対策
の3つです。
EMS対策としては、(1)の回路による対策としては、ノイズで誤動作しやすい微小アナログ回路をできるだけノイズに強いデジタル回路にします。
また、(2)ではアナログ回路の配線が受信アンテナにならないように、できるだけ配線を短くします。短い配線は、波長の短い、非常に高い周波数ノイズのアンテナとなり、回路を誤動作させるような周波数のノイズに対してはアンテナとなりません。
(3)は回路のシールドです。EMSは機器の外部から入ってくるノイズなので、遠方界となり、すべて電磁波の形でノイズを受けます。電磁波のシールドは簡単で、薄い金属などの導体で回路を覆ってやれば電磁波は、導体に吸収され熱となって消えてしまいます。
TVや携帯の送/受信回路はアナログの高周波回路です。この回路は、配線を短くするために、IC化されてきています。たとえばTVのチューナ回路はこれまではIC化が難しかったのですが、最近は電子チューナが製品化され、使われるようになっています。
また、このようなアナログ回路は基板上でもシールドされている設計が多くあります(図15)。
EMI対策も、対応は3つの方法を組み合わせてもっとも低コストで、各国の規格を満足させるかになります。
(1)の、回路による対策は、信号の終端処理を確実に行い、オーバーシュートやリンギングを発生させないようにします。
また、クロストークノイズと同じで、時間に対する電流の変化率(di/dt)が大きいほど発生するノイズが大きくなります(図16)。
このため、ドライバICの速度を遅くしたり、配線に直列抵抗を挿入して信号の立ち上がりを遅くしたりすると効果があります(図17)。
また、電源・グランドプレーンや面配線を強化して、SSOノイズを抑えたり、プレーンの一部が特定の周波数で共振(プレーン共振)を起こさないように注意します。また、信号とプレーンの間でのノイズが発生しないように基板配線設計を注意します。
これらの基板配線の注意点はいくつかの類型に分けられ、設計のノウハウとなっています。たとえば、パスコンの配置位置と接続配線の方法や、差動信号の配線のルール、またグランドプレーンの分割と信号配線の関係、などがそれです。
これらのノウハウはルール化が複雑なため、一般の基板CADの設計設計ツールでは制約しきれません。このため、基板の部品配置、配線設計時の抽象的な注意として扱われることが多いのですが、専用のツールを使って設計をバッチでチェックするルールチェッカなども製品化されています(図18)。
(2)の、アンテナを作らない、では基板配線をできるだけ短くします。また、クロック回路などでは、1つのドライバで多くのレシーバを接続しますが、気づかないでループ状の配線パターンを作成して、ループアンテナを作っている場合があります(図19)。
アンテナになるのは、基板配線だけではありません。ケーブルは長さも長く、実装形状もループを作ったり、折り曲げたりするため、意外な部分がアンテナになる可能性があります(図20)。
また、最初に紹介したようにICに乗っているヒートシンクもアンテナになります。ヒートシンクは放熱効率を高めるため、多くのフィンを付けて複雑な形状をしています。このため、多くの共振周波数をもち、それらのどれかがノイズの周波数と一致してしまうと、アンテナになります(図21)。
(3)のシールドですが、これはEMIでは多少複雑になります。つまり、近傍で対策するのか、遠方で対策するのか。近傍では電界か磁界かを考慮する必要があるからです。
筆者紹介
前田 真一(マエダ シンイチ)
KEI Systems、日本サーキット。日米で、高速システムの開発/解析コンサルティングを手掛ける。
近著:「現場の即戦力シリーズ 見てわかる高速回路のノイズ解析」(技術評論社)
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