ベクター形式画像データを直接取り込み、三菱電機のメーター用液晶モジュール:車載情報機器
三菱電機は、建設機械や船舶、二輪車のディスプレイメーター、産業機械用モニターなどに最適な「インテリジェントGUI(Graphical User Interface)搭載TFT液晶モジュール」を発表した。Adobeの「Illustrator」や「Flash」などで作成したベクター形式の画像データを、同モジュール内に組み込んだグラフィックスボードにそのまま取り込めることを特徴とする。
三菱電機は2013年5月7日、東京都内で会見を開き、建設機械や船舶、二輪車のディスプレイメーター、産業機械用モニターなどに最適な「インテリジェントGUI(Graphical User Interface)搭載TFT液晶モジュール」を発表した。同社の産業用TFT液晶モジュール「DIAFINE(ダイアファイン)」の最新製品となる。「第16回 組込みシステム開発技術展(ESEC2013)」(2013年5月8〜10日、東京ビッグサイト)の三菱電機ブースで一般公開されている。
今回発表したインテリジェントGUI搭載TFT液晶モジュールは、画面サイズが7インチワイドで解像度がWVGA(画素数800×480画素)の液晶パネルと静電容量式タッチパネル、両パネルの制御基板に加えて、GUIを表示するためのグラフィックスボードを1セットで提供する製品である。同年7月1日からサンプル出荷を始める。サンプル価格は12万円(税抜き)。量産開始は2014年1〜3月期を予定している。画面サイズが10.4インチワイドと12.1インチの製品も開発しており、これらは2014年4〜6月期に量産を始める予定だ。
同モジュールの特徴は2つある。1つは、ディスプレイメーターや産業機械用モニターのGUIをデザインする際に広く用いられている、Adobeの「Illustrator」や「Flash」などで作成したベクター形式の画像データを、グラフィックスボードにそのまま取り込めることだ。専用のツール「GUIデザイナー」を使えば、ベクター形式画像データの挙動と、タッチパネル操作や機器側からの情報を簡単にひも付けできる。
ディスプレイメーターや産業機械用モニターを開発するには、仕様検討やGUIのデザインに加えて、GUIの表示や制御を行うソフトウェアのプログラミングと試験が必要である。液晶ディスプレイの解像度やタッチパネルの操作性が向上すると、ソフトウェアのプログラミングや試験に掛かるコストや期間は増加してしまう。このことが、「建設機械や船舶において、アナログメーターからディスプレイメーターへの置き換えが進まない要因の1つになっていた」(三菱電機)。
インテリジェントGUI搭載TFT液晶モジュールを使えば、このソフトウェアのプログラミングや試験の工程を、GUIデザイナーによる画面ひも付け作業に置き換えられる。三菱電機によれば、「ハードウェアの価格は、グラフィックスボードが付くので少々高くなるが、顧客の機器開発費用を大幅に削減できるので、最終的な開発コスト削減につなげられる。当社内での実績では、開発費用と期間を約50%削減できた」という。
もう1つの特徴は、グラフィックスボードに搭載している、同社のハードウェアIP(Intellectual Property)「Sesamicro」を集積したASICによる高速の2次元グラフィックス処理である。独自アルゴリズムによって、ベクター形式の画像データを60フレーム/秒の速度で描画できる。グラフィックスボードは、このASICの他、外部映像入力や搭載機器との通信インタフェースを制御するマイコンなどを搭載しているだけなので、コストや消費電力はかなり抑えられている。
さらに、DIAFINEの静電容量式タッチパネルは、手袋を着けたままの指でもタッチ検出できるという特徴を持つ。2タッチまでの同時タッチ検出も可能なので、ピンチイン、ピンチアウト、フリック動作といった直感的な操作を行える。三菱電機は、「手袋を着けた状態で操作することの多い産業用機器では、確実にタッチ検出できる抵抗膜式タッチパネルが多く使用されている。DIAFINEの静電容量式タッチパネルであれば、抵抗膜式タッチパネルと同様に手袋を着けたままでもタッチ検出が行えるし、スマートフォンの普及によって当たり前になったピンチイン、ピンチアウト、フリック動作といったタッチパネル操作を、産業用機器に組み込めるようになる」としている。
インテリジェントGUI搭載TFT液晶モジュールのその他の仕様は以下の通り。輝度は900cd/m2。視野角は、水平方向と垂直方向とも−85〜85度。グラフィックスボードは、通信インタフェースとしてUARTとRS232Cを備え、外部映像入力はアナログのコンポジット映像信号、デジタルのLVDS(低電圧差動信号)に対応している。この外部映像入力を使えば、後方に設置したカメラを用いたバックモニター機能を建設機械などで容易に実現できるという。
2016年度に世界シェアを20%強へ
三菱電機の役員理事で液晶事業統括部長を務める蔵田哲之氏は、「当社の液晶モジュール事業の売上高は2012年度(2013年3月期)の実績で330億円。その内訳は、産業用が40%、車載用が40%、その他が20%となっている。2013年度は、400億円まで売上高を伸ばす計画だ。現在、液晶モジュールの世界市場規模は、産業用が約1000億円、車載用が1000億円強。年平均成長率は、産業用が3〜5%、車載用が10%となっている。新製品の投入でこれらを上回る成長を達成し、2015〜2016年度には産業用と車載用を合計した世界シェアを20%強まで高めたい」と述べている。
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