EVとCHAdeMO方式の急速充電器を導入、NEDOがスペインで実証実験:エネルギー技術 電気自動車
NEDOは、スペイン・マラガ市で日本製の電気自動車(EV)160台とCHAdeMO方式の急速充電器23口を配置し、「スマートコミュニティ」の実証実験を始める。この実証プロジェクトで得られた技術や成果を活用し、今後は欧州の他の国や中南米地域に対してもシステムの事業展開を行っていく。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2013年4月25日から、スペイン・マラガ市において、「スマートコミュニティ」の実証実験を開始すると発表した。当初、日本製の電気自動車(EV)160台とCHAdeMO方式の急速充電器23口を配置する。その上でEVの本格普及時を想定し、EV管理システムや電力マネジメントシステムなどの実証実験を行う。事業期間は2013年度から2015年度までの3年間。NEDOは、マラガ市の実証プロジェクトで得られた技術や成果を活用し、今後は欧州の他の国や中南米地域に対してもシステムの事業展開を行っていく。
今回の実証実験で、現地に導入される機器やシステムは、三菱自動車の「i-MiEV」を160台、状況に応じて半年〜1年以内に日産自動車の「リーフ」を40台追加する予定である。CHAdeMO方式の急速充電器はマラガ市内外の9か所に23口を設置する。このうち4か所は1つの制御装置でEVを4台まで充電できるスタンドとする。CHAdeMO方式の急速充電器は三菱重工業と日立製作所が製造したもので、国際電気標準委員会(IEC)に提案中の規格に準拠している。仕様は直流充電で、出力は50kW、約20分の充電時間で80%まで充電が可能だ。
今回のプロジェクトでは、日本側でEV管理システムやEVインフラ、情報基盤を整備する。スペイン側の企業コンソーシアムと連携してEV活用サービスや、電力マネジメントシステムの実証実験を行う。例えば、各充電ステーションの満空情報、車載機器と連動したナビゲーションサービスの提供などを想定している。
最終的にEVは200台が導入されることになるが、このうち50台をリース会社経由で一般市民に貸出し、残り150台はさまざまな業種の企業への貸し出しを予定している。NEDOは、「行動パターンが異なる利用者にEVを貸し出すことで、より実態に近い実験データを収集できる」とみている。
NEDOのスマートコミュニティ部長を務める山本雅亮氏は、「欧州は環境規制が厳しく、EVの導入を積極的に推進している。今回のプロジェクトでは、単にEVで走行するだけでなく、充電ステーションへの誘導を効率よく行うことによって、給電が集中しても電力系統に負荷がかかりすぎないようにする。そのためにどのようなサービスを組み合わせたらいいのか、などを検証していく」と話す。
この事業には、NEDOとスペイン政府・産業技術開発センター(CDTI)が取り組むジャパン・スペイン・イノベーションプログラム(JSIP)に基づいて、日本側から三菱重工業、三菱商事、日立製作所が、スペイン側から大手電力会社のエンデサ、大手通信会社のテレフォニカ、コンサルティング会社のアイエサがそれぞれ参画している。
なお、NEDOは海外でのスマートコミュニティ実証実験としてこれまで、米国・ニューメキシコ、米国・ハワイ、インドネシアおよびフランス・リオンで実施しているが、「EVと急速充電器に特化したプロジェクトは初めて」(NEDO)という。
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