ビッグデータを活用して“次に起こる故障”を予測する技術:大規模プラント向けに
NECは、工場や発電所などの大規模プラントにおける“故障の予兆”を分析し、故障に至る前に設備の不健全な状況を把握できる「大規模プラント故障予兆監視システム」を開発した。
稼働中の設備や装置などの“故障の兆候”をあらかじめ把握・予測できれば、予期せぬトラブルの発生を未然に防ぐことができる。
特に、工場や発電所といった大規模プラントでは、こうした考え、いわゆる「予防保全」が保全活動の1つとして重要視されており、プラントの安全性の向上や安定した稼働率の確保が強く求められている。
“故障の兆候”を、勘や直感(?)といった“予知”で正確に捉えることは、超能力者でない限り不可能だ。仮に、直感に頼った保全活動が原子力発電所のような施設で行われていたら、恐ろしくてたまらない。実際のプラントでは、当然ながらそんなことは行っておらず、多くの場合、センサーから得られる各種計測値や熟練者の経験則、そして、過去蓄積してきたあらゆる情報をフル活用して、総合的に設備の状況を把握し、“故障の兆候”を予測していることだろう。
NECは、より高精度な“故障の兆候”予測を、ビッグデータの分析技術により実現するシステムを開発した。2013年4月8日に発表した、「大規模プラント故障予兆監視システム」がそれだ。
同システムには、ビッグデータを分析し、“故障の兆候”を予測できる同社の独自技術「インバリアント分析技術」が組み込まれている。プラントの設備に設置されている各種センサーからの情報を収集し、それら大量のセンサーデータの中から、パターンや規則性などの普遍的な特徴を自動的かつ網羅的に抽出。それを健全な状態(モデル)として自動的に定義し、そのモデルと常時収集されてくるセンサーデータとを比較・分析しながら、故障が発生する前の不健全な状態を、“故障の兆候”としていち早く検出する。
同社は、同システムの開発に当たり、その有効性を検証するため、中国電力の協力の下、島根原子力発電所で実証実験を実施している。2011年8月から2012年11月までの期間、設備状態監視用センサー情報の解析を行い、過去の不具合事例などについて予兆を検出。さらに、2012年10月からは、島根原子力発電所の技術訓練用施設に、同システムを試験導入し、疑似的にさまざまな設備故障を発生させ、故障予兆検出を行い、良好な結果が得られたという。
こうしたセンシング技術やビッグデータを活用した一種のモニタリングシステムは、プラント設備だけでなく、近年、老朽化が問題視されている交通インフラ(道路構造物)の点検・監視にも活用されつつある(関連記事)。まずは、工場や発電所をターゲットにしているようだが、今後、同システムのプラント以外の応用展開にも期待したい。
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