ヨックモックの缶ケースで学ぶ芸術的な「巻き締め」:甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(10)(2/3 ページ)
金属製の灰皿やお菓子の缶など、身近な板金製品にプロテクニック「巻き締め」が使われている!
今、甚さんが解説しているのは、数学の公式でもなく、物理学の定理でもありません。これは、設計職人の実務知識(実際に溶接が可能な寸法)を教えているのです。
高級な寿司(すし)屋ほど、シャリが小さく、ネタが大きくなります。銀座の寿司屋がこの類(たぐい)です。一方、「うちに店は量で勝負だ!」という寿司屋がいて、おにぎりのようなシャリにネタを載せています。もしこれで、商売が成り立つなら、どうぞ、そのようにしてください。
溶接すき間が、「1.5以上」という記述があって、「8.5」にしたとき、「年棒制で業務指名制」の隣国企業において、指名される自信があるなら、どうぞ、「8.5」にしてください。……と甚さんは久々に冷たく突き放して解説しました。きっと、エリカちゃんがいるので、格好よく話したのでしょう(笑)。
分かりました! 「1.5以上」というのは、設計職人としての目標値なんですね。あくまでも職業上の。
「実務知識が大事」というのは、専門学校でたたきこまれてきましたよ。国木田さんも当然、大学か大学院で、そういうことを教わってきたんですよね?
それは……。
エリカちゃん、今の発言はよくねぇぞー? 自分が専門学校を卒業したからといって、自慢しちゃいけねぇ。ましてや、院卒の前でな。
はっ! 私としたことが……、すみません。
どうせ僕は、役立たずの院卒ですよ……。どうせ、どうせ……。
良君! 世の中は学歴社会じゃねぇーぞ! 自分が高学歴だからいって、自分を卑下するなー。
そうですよ、気にする必要ないです。税金と時間の浪費なんて、誰も言ってないですよ。
うん……、うん……、そうだね、エリカちゃん。僕もそう思うよ……。
その悔しさをバネにしろ! 主席で卒業のオメェなら大丈夫だ。
そうですよ! 頑張って! 今こそ、私を追い抜くときです!
……もうすぐ春ですね。そうだ、京都、行こう。ついでに舞鶴にでも行ってみようかな……。男の一人旅ってワイルドだろ? フフ、ウフフフ……。
おい! オ、オメェ、魂が旅に出てるぞ!! しっかりしろ!!
戻ってきてっ!!
……はっ! 僕、いま地球を見ていたよ……。とても青かったよ……。
金属製の灰皿
そんじゃ、次は、板金製の灰皿や菓子の缶に注目してみるぜぃ。
僕らはタバコを吸いません。吸っているのは甚さんだけです。
ンン? 僕“ら”って何だ? なぜ主語が複数形だ? あーん?
「エリカちゃんと僕」に決まってるでしょ! 僕“ら”はタバコを吸いません! 吸っているのは甚さん・だ・けーっ!
勝手にツガイになるんじゃねぇっ!
「ツガイ」とか、古っ! ふっるーっ! 普通、カップルとか言うっしょー!
そんなんじゃありませんっ! 全っ然っ!!
全力で否定されたーーっ!!(ガーン)
ツガイでもカップルでも何でもいいっ! 日本男児ならもっと実力を付けろーっ! 図2の上部を見ろ! 今すぐにーっ! 左側が100円ショップで販売しているアルミ製の灰皿だ。右側が、ハンバーガーショップにあるステンレス製灰皿だ。
右側が、ハンバーガーショップの灰皿、でんねん……。
オメェ、エリカちゃんに全力で否定されておかしくなったか? ふざけてねぇで、その2つの灰皿を引っくり返した裏面の写真を見ろ。特に、その端部処理に注目してみろ。安全性確保のために、最大の注意を払っている。それは「巻き締め」と言うんだぜぃ。
あらためて見ると感激ですね。100円の商品でも、精いっぱい、お客さまに対して安全性への気配りをしているのですね。
ところでよぉ、この灰皿の材質は分かるか? あん? まさか、オメェ……。
え〜とぉ、そのー……。
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