検索
連載

飛行機を作るには何が必要? なぜクラウドなのかモノづくり最前線レポート(35)(3/4 ページ)

国内外の設計開発者が参加する大規模なモノづくりの難しさは何か。広く散らばる関係者が同一の設計データを共有することがまず難しい。3次元CADのデータは容量が大きく、インターネット経由のアクセスではリアルタイム性に欠ける。航空機を製造する三菱重工業が選んだのはクラウド+シンクライアントという解だった。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

ネットワーク品質をカバーする3つの技術

 なぜ、レスポンスが上がるのか。富士通によれば、遠隔地からネットワークを介した際にも、3次元CADの操作性を損なわない画像データ高速化シンクライアント技術「RVEC(Remote Virtual Environment Computing、レベック)」を採用したからだという。以下に紹介するように、領域ごとの画面更新やCAD画像の効率的な圧縮が可能になったため、動画や高精細な画像を扱う際のデータ転送量を従来の約10分の1に削減できるという。富士通によると、一層のレスポンスの向上を目指して、低品質なネットワーク環境でも、シンクライアント接続時の操作応答を改善できる3つの技術を開発し、まず社内で利用し、今後、顧客への適用を図るという。

 3つの技術とは画面データ量削減技術と、ネットワーク遅延対策技術、GPU(Graphics Processing Unit)仮想化技術だ。それぞれがデータ送受信の遅延の問題、データ損失(パケットロス)の問題、描画処理の問題を解決することで、総合的に高速化を実現する。以上の手法を用いると、操作応答を最大10倍、高速化可能だという。

画面データ量削減技術

 画面データ量削減技術の実現手法はこうだ。まずネッワーク接続時に利用可能な通信帯域を監視する。次に、帯域に応じて画面の画質や描画のフレームレートを動的に変えてサーバからクライアントに送信する(図3*3)。従来方式である米Microsoftのリモートデスクトップ用プロトコルRDP(Remote Desktop Protocol)は帯域を使い切ることがあり、ここが課題となっていた。新技術ではRDPと比較して、最大10倍高速化できるという。

*3) 最も単純なシンクライアント技術では、1画面全てを動画として送信する。ただし、遠距離間を結ぶインターネット接続下では遅延が多くなり、実用的ではない。そこでRVECでは1画面を多数の長方形の領域に切り分けて監視し、更新が多い領域を動画で、そうでない部分は、更新した差分だけを静止画で送る方式を採った。静止画で送信する部分についても、絵の種類を判定し、圧縮アルゴリズムを切り替えている。こうすることで、CADで多用する線画のにじみやぼやけを防ぎながら高速化できる。


図3 画面データ量削減技術が採用した手法 1秒当たりに転送できるデータ量(帯域)が、例えば2Mバイト/秒(2Mbps)だった場合、制限を超えた部分は遅延してしまう(図左)。新技術では制限を超えないようにあらかじめデータ量を削減してから転送するため、遅延は起こらない(図右)。出典:富士通

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る