「現場で使える道具に仕上げた」、JasParがISO26262関連の成果を一般公開:ISO26262
車載ソフトウェアの標準化団体であるJasParは、自動車向け機能安全規格であるISO 26262に対応した車載システムの開発に役立つ、規格解説書やチェックリスト、機能安全テンプレート、記入ガイドを2013年5月下旬から順次一般公開する方針を明らかにした。
車載ソフトウェアの標準化団体であるJasParは、東京都内で開催した「機能安全Workshop」(2013年2月25日)において、自動車向け機能安全規格であるISO 26262に対応した車載システムの開発に役立つ、規格解説書やチェックリスト、機能安全テンプレート、記入ガイドを同年5月下旬から順次一般公開する方針を明らかにした。
JasParは、2010〜2012年度(2010年4月〜2013年3月)の3年間、電動パワーステアリングなどの開発プロセスをたたき台にして、ISO 26262に準拠した車載システムを効率よく開発するための知見やノウハウを国内自動車業界で広く共有するための取り組みを進めてきた。これらの取り組みは、2011年度と2012年度の各年度で、異なる認証機関によるレビューも受けている。2012年度は、自動車メーカーやティア1サプライヤ、半導体メーカー、開発ツールベンダなど27社から94人のエンジニアが参加し、1850ページの文書を作成した。認証機関からは420項目もの指摘があったものの、これらの指摘は文書に全て反映されている。
作成した文書は、ISO 26262の規格解説書、規格に準拠した開発を進める上で検証すべきチェックリスト、規格に準拠した設計手順のベースとなる機能安全テンプレート、機能安全テンプレートへの記入ガイドの4種類に分けられる。従来、これらの文書はJasPar会員しか利用できなかった。
今回JasPar会員以外に公開するのは、規格解説書のソフトウェア編/プロセス編/マイコン編、チェックリストのソフトウェア編/プロセス編、機能安全テンプレート、記入ガイドという7つの文書である。規格解説書のソフトウェア編とプロセス編は、それぞれチェックリストのソフトウェア編とプロセス編を同梱した形で、日本規格協会から有償で提供される。規格解説書のマイコン編と、機能安全テンプレート、記入ガイドについては、JasParのWebサイトから無償でダウンロードできるようにするという。公開時期は、JasParのWebサイトで無償提供するものは2013年5月下旬、日本規格協会が有償で提供するものは少し遅れて2013年6月以降をめどにしている。
公開する文書 | 有償/無償 | 提供窓口 | 公開時期 |
---|---|---|---|
解説書(ソフトウェア編) | 有償 | 日本規格協会 | 2013年6月以降 |
解説書(プロセス編) | 有償 | 日本規格協会 | 2013年6月以降 |
解説書(マイコン編) | 無償 | JasParのWebサイト | 2013年5月下旬 |
チェックリスト(ソフトウェア編) | 解説書(ソフトウェア編)とセット | 日本規格協会 | 2013年6月以降 |
チェックリスト(プロセス編) | 解説書(プロセス編)とセット | 日本規格協会 | 2013年6月以降 |
機能安全テンプレート | 無償 | JasParのWebサイト | 2013年5月下旬 |
記入ガイド | 無償 | JasParのWebサイト | 2013年5月下旬 |
JasParが公開するISO 26262関連の文書 |
JasParの代表理事で日産自動車の電子技術開発本部とEV技術開発本部担当の執行役員を務める豊増俊一氏は、「規格解説書のマイコン編のドラフト案を2012年10月に先行公開したところ、26カ国/128社からのアクセスがあり、その90%以上からJasParの取り組みに関心を持っているという回答を得た。今回公開する成果には、JasPar会員がISO 26262対応に向けて得た知見や経験を織り込んで、“現場で使える道具”に仕上げた。これらを、一般公開によって自動車業界で広く使ってもらうことで、さらによいものに育てていきたい」と述べている。
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