「ISO 26262の相場観を形成したい」、JasParが解説書の一般公開を検討:ESEC2012
車載ソフトウェアの標準化団体であるJasParは、経済産業省、自動車工業会、日本自動車研究所と協力して、自動車向け機能安全規格ISO 26262の解説書を作成中だ。現在はJasPar会員しか閲覧できないものの、今後の一般公開も検討されている。
「第15回 組込みシステム開発技術展(ESEC2012)」の専門セミナーにおいて、トヨタ自動車で制御ソフトウェア開発部の主査を務める西川賢司氏が、「自動車機能安全規格(ISO 26262)への対応に向けた業界の取り組み」と題した講演を行った。西川氏は講演の中で、国内の自動車メーカーや大手ティア1サプライヤが参加する車載ソフトウェアの標準化団体JasParが進めている、自動車向け機能安全規格ISO 26262への取り組みを説明した。
JasParは、経済産業省、自動車工業会(JAMA)、日本自動車研究所(JARI)と協力して、開発現場でも利用できるようなISO 26262の解説書を作成するなどの取り組みを進めている。西川氏は、JasParでこれらの取り組みを主導している機能安全推進ワーキンググループで活動しているのだ。同氏は、「ISO 26262の規格書だけでは、自動車メーカーから、車載システムのサプライヤ、その車載システムを構成する部品のメーカー、車載ソフトウェアのベンダーに至るまで、開発現場で『何を』『どこまで』やればいいか分からない。また、自動車メーカーや大手ティア1サプライヤは、それぞれ自社の方向性を定めつつあるものの、それらの方向性が必ずしも同じというわけではない。そこで、国内自動車業界におけるISO 26262の“相場観”を形成するために、2010年度からJAMA、JARI、JasParが連携して、開発現場で役立つ解説書を作成している」と語る。
JasParが作成しているのは、ISO 26262のPart.6(ソフトウェア開発)に対応する解説である。規格の要求内容を明文化するとともに、運用可能なチェックリストなども用意している。2011年度にドラフト版が完成しており、JasPar会員向けに公開されている。また、ISO 26262に準拠した車載システム開発に役立つ技術テンプレート(ひな形)と、技術テンプレートを運用するためのガイドを作成した。そしてJasParでは、この解説書と技術テンプレートに基づいて、仮想的な車載システム開発を実施して、ISO 26262への準拠の証拠(エビデンス)として必要になる文書作成を行い、その有効性を確かめた。さらに、欧州での運用事例と比較するために、コンサルティング企業のexidaによる評価も受けたという。
2012年度は、「2011年度の成果をブラッシュアップして行くことになる。例えば、技術テンプレートを使った文書作成の問題点として、『日本人の技術者は、1から10までテンプレート通りに行う傾向がある。しかし、実際の車載システム開発ではさまざまな要求が存在するので、テンプレート通りに文書を作成できるとは限らない。ISO 26262への準拠を柔軟に行えるように、テンプレートにある程度の自由度を持たせるべきではないか』という指摘をexidaから受けた」(西川氏)という。
JasParが作成した解説書や技術テンプレートの一般公開については、公開方法を含めて現在検討中である。西川氏は、「現在は会員だけに公開しているが、ISO 26262の相場観を形成するには、何らかの形で自動車業界全体に広く知らしめる必要があるだろう」と述べている。
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