「エネチャージ」搭載でJC08モード燃費が33km/lに、スズキの「アルト エコ」:4WDモデルも燃費30km/l以上
スズキは、軽自動車「アルト エコ」をマイナーチェンジし、同年3月4日から発売する。新型「ワゴンR」に搭載した、減速エネルギー回生機構「エネチャージ」などの採用により、2WDモデルのJC08モード燃費を従来の30.2km/l(リットル)から33.0km/lに引き上げた。新たに追加した4WDモデルも、JC08モード燃費が30.4km/lとなり、30km/lを上回った。
スズキは2013年2月20日、軽自動車「アルト エコ」をマイナーチェンジし、同年3月4日から発売すると発表した。2012年9月発売の新型「ワゴンR」に搭載した、減速エネルギー回生機構「ENE-CHARGE(エネチャージ)」をはじめとする次世代環境技術「スズキグリーン テクノロジー」の採用や、約20kgの軽量化などにより、2WDモデルのJC08モード燃費を従来の30.2km/l(リットル)から33.0km/lに引き上げた。新たに追加した4WDモデルも、JC08モード燃費が30.4km/lとなり、30km/lを上回った。税込み価格は、「ECO-L」グレードの2WDモデルが90万円、「ECO-S」グレードが100万円。両グレードとも、マイナーチェンジ前と比べて5000円値上がりしている。「ECO-L」グレードの4WDモデルは100万円、「ECO-S」グレードの4WDモデルは110万円。
新型アルト エコは、33.0km/lという良好な燃費を達成するため、大まかに分けて4つの技術を採用した。1つ目は、新型ワゴンRに採用した、エネチャージ、時速13km以下で動作するアイドルストップシステム、蓄冷材を通した冷風を室内に送ることでアイドルストップ中も車室内の快適性をより長く持続させる「ECO-COOL(エコクール)」といった、スズキグリーン テクノロジーの採用である(関連記事1)。
2つ目は、車両重量の軽量化である。個別の部品について見直しを行い、材料や構造を変更するなどして、2WDモデルで車両重量を730kgから710kgに低減した。その一方で、安全性や快適性も維持できているという。
3つ目の技術は、エンジンやトランスミッションなどの効率を向上したことだ。アルト エコに搭載しているエンジン「R06A型」について、タイミングチェーンの幅を細めて摩擦抵抗を低減した。CVT(無段変速機)は、VVT(可変バルブタイミング機構)などのエンジン制御に合わせて変速制御を最適化し、より効率の良い回転域で走行できるようにした。さらに、薄型軽量のラジエーターを採用するなどして、パワートレイン全体の軽量化も図ったとしている。
4つ目になるのが、走行抵抗の低減である。走行する際に車体に掛かる空気抵抗については、リヤバンパーの形状変更や、リヤタイヤハウスへの整流板の採用によって、抵抗となる空気の乱れを低減。タイヤの転がり抵抗を低減するために、新開発のタイヤも採用した。このタイヤは、内部構造の最適化によって空気圧を300kPaに設定しており、乗り心地や静粛性といった快適性も確保している。そして、ブレーキパッドスプリングにコーティングを施して、ブレーキの引きずり抵抗も低減している。
「ミラ イース」のマイナーチェンジはどうなる?
今回のマイナーチェンジで、新型アルト エコのJC08モード燃費は、内燃機関車でトップ、ハイブリッド車を含めてもトヨタ自動車の「アクア」に次ぐ2位となった。従来は、アルト エコよりも、トヨタ自動車の「プリウス」や「レクサスCT200h」といったハイブリッド車の方が良好な燃費だったが、ついにこれらを上回ったことになる。
アルト エコは、JC08モード燃費が30.0km/lで同格の軽自動車であるダイハツ工業の「ミラ イース」と激しく競合している。しかし、ミラ イースより燃費が0.2km/l良好ではあるものの、最も安価なグレード(アルト エコはECO-L、ミラ イースは「D」)の価格が10万円高かったこともあってか、販売台数では後れを取っていた。
新型アルト エコは、ミラ イースと燃費差が3km/lまで広がったこともあって、商品力は高まっている。さらに、従来はなかった4WDモデルの追加によって、ミラ イースに対抗し得るラインアップがそろったといえる。
一方のミラ イースは、2011年9月の発売以降、2012年5月に一部改良を行っているが、大幅な改良は行っていない。2013年中には、2012年12月にビッグマイナーチェンジした「ムーヴ」(関連記事2)に採用した燃費向上技術をミラ イースに採用するなどして、新型アルト エコに対抗するとみられる。
関連記事
- 「ワゴンR」の燃費が新技術で28.8km/lに、時速13km以下でアイドルストップ
スズキは、9月発売予定の新型「ワゴンR」に採用する新たな低燃費化技術として、リチウムイオン電池と高出力オルタネータを用いるブレーキ回生システム「ENE-CHARGE」と、アイドルストップ時にも蓄冷材を通して冷風を室内に送れる「ECO-COOL」を発表した。これらを使ったアイドルストップ機能と軽量化などにより、新型ワゴンRのJC08モード燃費は28.8km/lとなった。 - 新型「ムーヴ」の燃費は「ワゴンR」以上、走行性能でも「N-ONE」に対抗
ダイハツ工業の新型「ムーヴ」は、「e:Sテクノロジー第2弾」の搭載により、スズキの「ワゴンR」を上回る29.0km/lというJC08モード燃費を達成。5〜6万円を追加すれば。時速30km以下で動作する衝突回避支援システムも装備できる。さらに、ホンダの「N-ONE」に対抗すべく、足回り部品の改善による走行性能の向上も果たした。 - ダウンサイジング過給の「N-ONE Tourer」、競合の軽ターボを上回るトルク性能
ホンダの軽自動車「Nシリーズ」の第3弾「N-ONE」のターボチャージャ搭載車種である「N-ONE Tourer」は、「ダウンサイジング過給」を取り入れている。競合車種となるスズキの「ワゴンR スティングレー」、ダイハツ工業の「ムーヴ カスタム」と比較した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.