設計者CAEもクラウドも「まだこれから」。2013年のCAD/CAE/PLM:3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(22)(2/2 ページ)
2012年は、構造解析以外のCAE/CAD連携や、クラウドベースの設計ツールの発表などが目立った。2013年も、引き続きこの流れが加速していくのか。また、設計現場でのCAE普及はどうなるか。
いろいろなクラウドサービスが登場
最後は、クラウドについて触れます。
業務ユースか個人ユースかを問わず、最近は、クラウド上でのデータの保管、アプリケーションの提供が当たり前になってきました。
かつて日本の製造業においては、「社外にデータを保存する」ということは考えられないことでした。ところが2011年3月11日以降、BCP(Business continuity plan:事業継続計画)の観点から、急にクラウドが注目され出しました。データの保存はともかく……、2012年は、CAEやレンダリングなど大きなコンピュータリソースを使う作業をクラウドで提供するサービスが出てきました。
CAEについては、先ほども述べたように、2012年からAutodeskが、クラウドCAEを提供開始し、ライセンス自体の形態はサブスクリプション形式が採られました。既にクラウドCADに関しても、同社は「Fusion360」の提供開始を既に発表しています。PLMの「Autodesk360」も既にあります。
国内では、電通国際情報サービス(ISID)が「Plexus」という、PDMをはじめとするさまざまなクラウドベースサービスの提供を開始しました。Plexusの場合、PDMに限らず、データバックアップなどBCPを意識したサービスを展開しています。
ただし、業界筋から聞こえてくる話を総合すると……、クラウドベースのシステムは「まだまだ、これからだろう」といったところが正直なところです。
確かに現在、世の中にあるクラウドベースのPDMやアプリケーションの情報は、ベンダーによる製品紹介の情報、つまり「仮の事例」がほとんどであって、実際のユーザー事例は、まだそれほど見掛けません。
現実問題として、自社の設計情報については、やはり「自社で、オンプレミスのシステムで管理したい」というニーズの方が強いでしょう。
一方、クラウドベースで提供されるサービスは大抵、セットアップや設定が非常に簡単です。さらに、普通は一括の初期投資が必要ではなく、「必要なシステムについて、必要な期間分だけ料金を支払う」という契約が主流なので、コスト面でも有利です。
2013年は、ユーザーがそのようなメリットと、自社でシステムを構築するメリットを比較した結果、クラウドベースのPLMやアプリケーションを選択するのかどうか、注目していきたいところです。
販売サイドの変化にも期待したい
最後にもう1つ、私が3次元データ業界に期待したいことは、「従来の枠組みを超えて3次元データを活用する」ような取り組みが、もっと増えてくることです。
現在、ソフトウェアを販売するベンダーの態勢は、「CADはCAD」「CGはCG」、あるいは「製造は製造」「建築は建築」「エンターテイメントはエンターテイメント」……などと分かれています。同じ3次元データを扱っているのに、売っている人たちの間で、さまざまな分野が相互にクロスしていないのです。
ユーザーサイドだけではなく、販売サイドも柔軟に、さまざまな3次元のツールを行き来すれば、「本当の意味での3次元データ活用」が進むのではないかと私は考えています。そんな動きも、2013年の3次元データ業界に期待したいと思います。
筆者からお知らせ
2012年末に「Kindle Direct Publishing」を利用した3次元プリンタの入門本を出版しました。それほどボリュームのある本ではありませんが、3次元プリンタの基本的な情報を網羅したつもりです。既に業界通の方も、そうでない方も、ちょっとしたリファレンスにはなるかと思いますので、よろしければぜひどうぞ。
「初心者Makersのための3Dプリンタ&周辺ツール活用ガイド」(Kindle版)
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