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設計者CAEもクラウドも「まだこれから」。2013年のCAD/CAE/PLM3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(22)(1/2 ページ)

2012年は、構造解析以外のCAE/CAD連携や、クラウドベースの設計ツールの発表などが目立った。2013年も、引き続きこの流れが加速していくのか。また、設計現場でのCAE普及はどうなるか。

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 前回は、主に3次元プリンタについてお話ししましたが、そのための肝心要なデータ作りをするCADとCAEを忘れてはなりません。CADや3次元(3D)データについては前回も少し触れましたが、今回はもう少し詳しく述べていきます。

 CADやCAE用のツールは、いずれもソフトウェアとしては“完成の域”にあるだけに、2013年も「大きな驚き」はないのかもしれませんが……。

CAEは、さらに設計者寄りなツールへ

 ともかく今、どのベンダーも前に進めようとしているのはCAEではないでしょうか。そして「設計者に対してCAEが十分に浸透しているのか」といえば、まだその入口にある現状だといえます。3次元データでの設計がようやく普及しつつある状況下で、設計者が上手にCAEを使いこなすことは、以前よりも増して、大きな意味があるはずです。こうした動きは、構造解析系のCAEを中心として、着々と広がってきています。

 2012年を振り返ると、構造解析以外の分野でCAE業界に動きがありました。CADと連携する樹脂射出成形の解析といえば、米モールドフローを吸収した米オートデスクの「Autodesk Moldflow」が挙げられます。また2012年9月3日には、米ダッソー・システムズ・ソリッドワークスが樹脂流動解析ソフトウェア「SolidWorks Plastics」を日本で発売開始。SolidWorksユーザーの設計者が使えるオプションが増えました。これらによって今後は、樹脂部品を設計する人たちが、その設計過程において、成形性を考慮した設計を取り入れる機会が増えてくることになるでしょう。

 流体解析(CFD)においても、同様な意識が見られました。私は2012年10月に開催された国産ベンダー ソフトウェアクレイドルのユーザーカンファレンスを傍聴しました。「設計実務を意識した解析」について、ソフトウェアベンダーだけでなく、ユーザー側も強く意識した内容が増えてきました。

 ソフトウェアの機能としては、例えば同社の流体解析ソフトウェア「STREAM」はポスト処理の機能の一部として、設計者が強く求める「熱経路の可視化機能」や、「放熱を考えたときのボトルネックを容易に判別するための機能」を標準実装しました。従来のポスト処理機能でも十分可能なことでしたが、従来の主流ユーザー、つまり“解析の専門家”ではなく、“解析の専門家ではない”設計者自身が扱いやすいように考えられた機能でした。この動きは、ベンダー側が「今後のCAEが。もっと設計者の日常に寄り添ったツールになっていく」と考えていることの1つの現れではないかと思いました。

 それとは違う角度での取り組みも出てきました。「CAEの計算をクラウド上のリソースを使って実行する」ということです(クラウドについては、記事後半でも別途述べます)。例えば2012年に私自身も試して、本連載の第17回で書いた「Autodesk Simulation 360」です。「設計者にとっての使い勝手」は、当然、設計者に向けた普及を考えたときに重要なことです。さらにコストも、そのポイントです。

 人口が少ない解析専門家が使う場合と違い、人口の多い設計者(非解析専門家)が使う場合、計算のジョブ数が増大することは容易に予想できます。そうなると実際、エンドユーザーが無理なく利用できるライセンス形態が必要となるでしょう。

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 従来通りのライセンス形態で単価を下げる、ということは1つの選択肢ではあります。それ以外に、Simulation 360のような「サブスクリプション形式」のような従量課金モデルも、クラウドの普及と同時に、より積極的に志向されるのではないでしょうか。

 ただ、CAEに対して「ハードルの高さ」を感じる設計者が多い上に、CAEの入門書についても「設計のニーズに対し、どのような解析を行えばよいのか」という、従来の本からすれば“逆引き”のような内容のものが見られません。

 今後、ベンダーや販売代理店などが、「設計者のCAEに対するハードルを下げる」、あるいは「使ってみたいと思わせるようにする」という課題に対してどう取り組むのかが、この分野の一層の伸びに左右しそうです。

 CADやCAEに関して言えば、どのベンダーも注力していくテーマは、「設計業務そのもので、いかに楽をするか」でしょう。別の言い方をすれば、「地味だけど、玄人受けする」ような機能を充実させることです。

 ライセンス形態の変化については、2013年中に何か大きな動きがあるとは考えづらいです。ただし今後、クラウド上で提供される機能が増えてくれば、それに伴ってサブスクリプションのような利用モデルが徐々に増えてくるのかもしれません。

PLM/データマネジメントは、もっとプロモーション?

 エンタープライズレベルのPLMでは「Teamcenter」(米シーメンスPLMソフトウェア)の普及がかなり進んでいるようです。新しい動きとしては、従来製品のパッケージという形ではなく、「Aras PLM」(米アラス)のようなオープンソースパッケージで提供するケースが、徐々にですが、増え始めています。

 3次元CADがどんどん普及していることで、管理すべき3次元データが急速に増加しています。実際、3次元CADによるプロセスが現場に定着してきた会社に対して、「次に、何をするのか」と尋ねると、最近は大体、次の2つの答えが返ってきます。1つが、先ほど出てきたCAEです。もう1つが「データマネジメント」です。価値のある3次元データを有効活用するためにも、データマネジメント、つまりPLMやPDMが必要だという認識が強まりつつあります。

 本格的な3次元データ活用を組織として進めていく上では、導入規模やレベルの話は置いておいて、とにかくデータマネジメント関連を着々と進めていくことが必要でしょう。

 データマネジメントのツールは、CADやCAEなどのアプリケーションと違い、プロセス改革なども含めて「やるべきことが多い」のが現実です。どんなに導入が簡単だと言っても、「ファイル管理以上のことをやろう」とすれば、工数と労力がかかることは確かです。その域まで踏み込む企業が、今後、どのくらい出てくるのか。PLMやPDMのますますの普及は、まずそこがカギといえそうです。

 今後は、最近のPLM/PDMのコスト面も含めた導入のしやすさや、選択肢の豊富さにも着目すべきでしょう。しかし、そこに関連して、ちょっと気になっていることがあります。

 以前、ベンダーやメディアによって「PLMの重要性」について声高に語られた時期がありました。しかし最近は、そのようなプロモーションや報道があまり見られなくなりました。当然、プロモーションの量と普及率に、直接的な相関があるとは限りません。ただ、ベンダー自身が積極的にプロモーションしていないと、せっかく興味を持ったユーザーが積極的に調べだしたとき、「一体、どんなものがあるのか」探りづらいでしょう。「ツールの普及状態はどうか」「どんな事例があるのか」「自分の企業の規模にふさわしいのはどれか」など、導入前に調べておきたいものだと思いますが。

 PLM/PDMについて「2013年はどうなる?」という予測というよりは、「いろいろな情報が市場に出てきてほしい……」という私自身の希望です。

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