はやぶさ2は小惑星までどうやって向かうのか? 〜ミッションシナリオ【前編】〜:次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(6)(2/3 ページ)
これまで、小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載される装置の役割や仕組みについて解説してきたが、今回は、プロジェクト全体の流れをあらためて整理したい。打ち上げから地球帰還までにこなさなければならないミッションシナリオとは?
1年後に再び地球に戻ってくるのはなぜか?
「はやぶさ2」が目指す天体は小惑星「1999JU3」である。1999JU3は、近日点距離が0.96AU(天文単位)、遠日点距離が1.42AUという楕円軌道を周回しており、公転周期は約1.3年(約474日)。このように地球に接近する軌道を持つ天体を地球近傍小惑星(NEA:Near Earth Asteroid)と呼ぶが、そのおかげで比較的少ない燃料で到達することができる。ちなみに、初代が向かった小惑星「イトカワ」もNEAである。
「はやぶさ2」は打ち上げ後、真っすぐ1999JU3には向かわずに、まずは地球と併走しつつ、太陽を1周する。そして、1年後の2015年12月に再び地球に接近し、地球の引力を利用して軌道を変える「地球スイングバイ」を実施。1999JU3に向かう軌道に入れるだけでなく、地球の公転を利用して、探査機の加速も同時に行う。これは初代でも使われた方法だ。
ロケットが十分に強力ならば、ダイレクトに目標天体に向かうこともできるだろう。しかし、H-IIAの場合、そこまで高い能力はないのでスイングバイを使う必要がある。初代では、地球スイングバイにより、太陽周回の軌道速度が秒速30kmから同34kmまで加速された。スイングバイの原理について、ここで詳しくは述べないが、JAXAのWebサイトが参考になるだろう。
「はやぶさ2」の軌道図を以下に示す。この図は、太陽を原点に地球をX軸にそれぞれ固定して、その座標系の上に1999JU3と「はやぶさ2」の軌道を表示したものだ。図上で地球は固定されているが、もちろん実際には太陽の周りを公転している。実際の1999JU3の軌道は楕円であるが、この座標系においてはこんな“花”のような形となる。
「はやぶさ2」の往路の軌道は赤色で示されており、「EDVEGA Loop」と注釈のある小さなループが、地球スイングバイまでの1年間の軌道である。実際には太陽の周りを1周しているのだが、地球との相対位置が近いために、この図ではほとんど動いていないように見える。
その後、スイングバイによって軌道を大きく変え、地球を離脱。1999JU3の軌道はピンク色で示されているが、徐々に近づき、2018年6〜7月に1999JU3に到着する予定だ。地球を出発してから、およそ3年半後のことになる。
ちなみに、NASA/JPLのWebサイトでは、1999JU3の諸情報を見ることができる。「Orbit Diagram」をクリックすれば軌道も表示されるので、参考になるだろう。簡易的な計算であるため、何年も先の予測位置では誤差が大きくなる可能性もあるが、軌道のイメージがつかみやすいので、興味があればチェックしてほしい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.