日産自動車が排ガス触媒の白金使用量を削減へ、7割を鉄化合物に置き換え:nano tech 2013
日産自動車は、ディーゼルエンジンの排気ガス触媒に使用されている白金の70%を、安価で調達が容易な鉄化合物に置き換える技術を開発中である。「nano tech 2013」のNEDOブースで詳細を発表した。
日産自動車は、ディーゼルエンジンの排気ガス触媒に使用されている白金の70%を、安価で調達が容易な鉄化合物に置き換える技術を開発中である。「nano tech 2013(第12回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議)」(2013年1月30日〜2月1日、東京ビッグサイト)のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)ブースで詳細を発表した。
内燃機関でガソリンや軽油を燃焼した後に排出される排気ガスには、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などが含まれている。これらを大気中にそのまま放出しないために、自動車に搭載されているのが排気ガス触媒である。日産自動車は、電気通信大学、名古屋大学、早稲田大学と共同して、ディーゼルエンジンに用いられている排気ガス触媒の1つであるリーンNOxトラップ触媒(LNT)に使用している白金の量を大幅に削減する技術を開発している。NEDO傘下の開発プロジェクトで、期間は2009〜2013年度の5カ年となっている。
開発中の技術では、数十nmサイズまで微粒子化したペロブスカイト構造を持つ鉄の酸化物を用いる。これを、排気ガス触媒の基材として用いられている酸化セリウムに坦持した場合に、白金と同等の触媒性能を発現することを確認した。エンジンを使った耐久試験後も触媒性能を維持できるので、排気ガス触媒の白金代替材料として実用可能だとしている。
ただし、今回開発した鉄化合物が、白金と同等の触媒性能を持つのは、400℃以上の高温環境に限られる。エンジン始動時などの低温環境にある場合には、触媒性能は大幅に低下してしまう。このため、2013年度末のプロジェクト完了時の目標としては、全ての白金を代替するのではなく、全体の70%に鉄化合物を用い、残りの30%は白金を従来通り使用する予定である。
白金の使用量をさらに削減するための技術開発も進めている。先述した通り、開発中の鉄化合物が触媒性能を最大限に発揮するには400℃以上の高温環境が必要である。しかし、アーク放電などで発生させたプラズマを添加すると、150℃程度の低温環境でも触媒性能を発揮できることを見いだした。現在、排気ガス触媒として一般的なハニカム構造の内部にプラズマを添加する方法や、車載可能なプラズマ発生システムなどについて研究を進めている。
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