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カタログ燃費と実燃費の差をなくせ! 欧州が燃費計測の世界標準策定に動くJC08モードでもまだまだ甘い(1/2 ページ)

自動車のカタログ燃費よりも、その自動車を実際に運転して走行する際の実燃費が下回っていることは周知の事実だ。この問題を解決するため、日本でも2012年4月からJC08モード燃費を導入し、より実燃費に近いカタログ燃費が使用されるようになった。しかし欧州は、燃費計測方法の世界標準の策定など、さらに先進的な取り組みを進めようとしている。

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 新車が発表される際に、最も注目される性能の1つが燃費である。燃費は、一定の容量の燃料を消費して走行できる距離として表わされることが多い。例えば、日本と欧州の場は、1l(リットル)当たりの燃料で走行できる距離をkm単位で示す、km/lが使用されている。一方米国では、1ガロン(約3.8l)当たりの燃料で走行できる距離をマイル(1マイルは約1.6km)単位で表すMPG(マイル/ガロン、1MPGは約0.43km/lに相当)を用いている。

 日米欧とも、燃費は数値が高いほど良い。一般的に燃費が良い場合には「低燃費」と表現することが多いが、これは燃費の語源である燃料消費率、すなわち一定の距離を走行するのに必要な燃料の量として考えた場合、数値が低い方が効率が良いことから使用されている。

 さて、車両の性能としてカタログに掲載されている「カタログ燃費」と比べて、一般ユーザーが運転して走行する場合の「実燃費」が下回っていることが多い。MONOistに掲載した、『「最新ガソリン車の実燃費はHEVと同等」、内燃機関車の研究団体が発表』という記事では、公道を走行して計測した実燃費は、ハイブリッド車の「フィット ハイブリッド」であれ、最新ガソリンエンジン車であるマツダの新型「デミオ」であれ、カタログ燃費を下回っている。

シャシーダイナモメーターを使った燃費計測のイメージ
シャシーダイナモメーターを使った燃費計測のイメージ。(クリックで拡大) 出典;明電舎

 これはカタログ燃費が、各国や地域が決めた一定の走行パターン(テストサイクル)に基づいて計測していることに原因がある。日本のテストサイクルとしては、2012年3月まで用いられていた10・15モードや、移行期間を経て2012年4月から正式に採用されたJC08モードが知られている。欧州はNEDC(New European Driving Cycle:新欧州ドライビングサイクル)を、米国では米環境保護局(EPA)が定めるテストサイクルを使用している。

 国や地域でテストサイクルは異なるものの、一定の走行距離の中で、市街地での走行パータンや、高速道路での走行パターンを繰り返して燃費を計測するという意味では同じである。これらのテストサイクルに従って、燃費計測専門のテストドライバーが、路上の走行状態を模擬するシャシーダイナモメーターという巨大なローラーの上を走行することにより、車両の燃費を計測するのだ。テストドライバー並みの走行技術を持たない一般ユーザーが、気候や渋滞などの影響を受けながら走行する際の燃費である実燃費が、カタログ燃費に及ばないのは当然のことだろう。

カタログ燃費と実燃費を近付ける

 カタログ燃費と実燃費に乖離(かいり)が存在することは、自動車ユーザーの中では当たり前のように受け止められている。しかし、カタログ燃費をできるだけ実燃費に近付けるための取り組みが進められていないわけではない。

 日本では、燃費計測に用いるテストサイクルを、市街地の走行パターンだけを反映した「10モード」から、郊外の走行パターンを追加した「10・15モード」へ、1991年に変更している。そして2012年4月から本格導入されたJC08モードは、エンジンが暖気されていない状態から始めるコールドスタートを走行パターンに追加したり、最高速度を毎時70kmから毎時80km以上に引き上げたりするなど、10・15モードよりも実走行の状態に近づけている。このため同じ車両で見ると、JC08モード燃費が、10・15モード燃費よりも10〜15%小さくなっている。例えば、2011年6月に発表されたマツダの「デミオ」の10・15モード燃費は30.0km/lだが、JC08モード燃費は25.0km/lに下がっている。

 米国のEPAも、2007年から新たなテストサイクルを導入している。それまで使用していた、市街地用の走行パターン「FTP-75」と、高速道路用の走行パターン「US06」を改定するとともに、空調を使用しながら走行する「SC03」を追加するなどして、実走行の状態に近付けたのだ。

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