世界に勝つ日本の製造業、洋上風力発電の巻:小寺信良のEnergy Future(23)(2/5 ページ)
風力発電には、2050年時点における全世界の電力需要の2割以上を満たす潜在能力がある。当然設備の需要も大きく、伸びも著しい。しかし、小さなモジュールをつなげていけばいくらでも大規模化できる太陽光発電とは違った難しさがある。効率を求めて大型化しようとしても機械技術に限界があったからだ。ここに日本企業が勝ち残っていく余地があった。
水深が深くなると何が起こるのか
水深が深くなれば、それだけ建設コストやメンテナンス費用が高くなる。従って近年計画されている洋上ウィンドファームでは、風車が巨大化する傾向がある(図4)。小さいものをたくさん建てるよりは、大きいものを少なく建てた方が、経済合理性にかなうからである。
図4 EUにおける洋上風力発電の傾向 沿岸からより遠く、より深い位置に設置し始めている。2011年時点は平均水深22.8mで、沿岸からの平均距離は23.4kmだったが、建設中のものに限れば25.3m、33.2kmとなっている。円の大きさは計画の総発電量を表している。
大型洋上発電用風車の世界とは
巨大洋上風力発電ではイギリスが先陣を切るが、やがて他国もそうせざるを得ないタイミングがやってくる。現時点での主力は3〜4MWクラスの風車だが、今後は6〜8MWクラスに大型化するとみられている。
現在、洋上風力で使われる風力発電機は、2.9MW機ではドイツSiemensが53%、2.6MW機ではデンマークVestas Wind Systemsが36%であり、この二強だけ市場の90%近くを占める(図5)。日本企業に入り込む余地などないのが現状*4)なのだが、大型化に際してもこの勢力図がそのまま移行するわけではない。
*4) 日本企業も国内の陸上風力発電市場では健闘している(記事へ:制度に翻弄される国内の風力発電、FIT導入で大幅増は可能なのか)。
なぜならば今後の大型化は、現在あるものをそのまま大きくするだけの改良ではすまないからだ。従来型はもはや物理的限界が来ており、別のノウハウが必要になる。従って大手2社が、必ずしも巨大風車ビジネスに積極参入するわけではない。ここに日本企業が入り込む余地があるとみられている。さらに、今後全ての洋上風力が大型化するわけではなく、まだ沿岸地域で建設可能な地域では小型・中型の需要もそれなりにある。
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