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第9回 TSVを前提としたモバイルDDR前田真一の最新実装技術あれこれ塾(1/3 ページ)

実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第9回は、モバイルDDRメモリの最新規格である、LPDDR3と、第3回で取り上げたTSVによって実現可能になったWide IOについて解説します。

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本連載は「エレクトロニクス実装技術」2011年12月号の記事を転載しています。



1. 新しいモバイルDDR規格

 スマートフォンやタブレット端末は単なるメール付き携帯やファイルビューアから、インターネット端末、ゲーム機、ビデオ編集ツールなどアプリを使う携帯PC端末に変化してきました。本体サイズを変えない範囲で、画面のサイズが少しずつ大きくなると同時に画面の分解能が上昇しています。それに従いメモリサイズとCPUの処理能力も、新型が出るたびに上昇しています。いまやスマートフォンでハイビジョン画像を撮影、編集してメールでやり取りできるようになっています。

 画面が大きく、分解能が上昇すれば、画面表示のためのメモリは増大すると同時に高速化が求められます(図1)。

図1 モバイル機器も多くの高速メモリを必要とする
図1 モバイル機器も多くの高速メモリを必要とする(クリックで拡大) (出典:ST Ericsson, CDN Live 2011.5 資料より作成)

 それにもかかわらず、バッテリーのもち時間は長くなってきています。

 これは、バッテリー自身の容量増加もありますが、徹底した回路の低消費化が大きな役割を果たしています。携帯機器の機能、性能向上に従い、画面の表示やアプリの実行に使うメインメモリは急速に高速化と大容量化が求められていますが、メモリの高速化、大容量化には大幅な消費電力の増大につながります。

 しかし、電池の持ちを長くするためにはメモリにも低消費電力が求められます。

 このため、新しいモバイル用メモリの規格はメモリの高速、大容量化と低消費電力化2つの目的を達成するために制定されます。

 このメモリの高速化、大容量化と消費電力の低減は矛盾する要求で両方を同時に満足させるためにはこれまでの技術の延長ではなく、新しい技術の導入が必要です。

2. 2段階での対応

 この矛盾する2つの要求を同時に満足させるための技術を開発するためには時間がかかります。また、新しい技術を使って製品を作るためには、歩留まりや設備投資といった問題で、製品が普及するまではコストが上昇します。しかし、モバイル機器のように競合が激しく、価格も高くない商品では、大幅な価格上昇は認められません。しかも、性能を向上させた新製品の開発は待ってはくれません。

 このため、JEDECでは、新しいモバイルメモリの規格として2つの規格を同時に考えることにしました。

 1つは現在の技術の延長で、現在、要求が強く出ているメモリの高速化、大容量化を図りつつ、消費電力の増大を押さえるための規格を出来るだけ早く制定します。 もう一つは、現在、研究室レベルで、数年後には広く使われるだろう技術を使って、さらにメモリの高速化、大容量化を図りつつ、消費電力を低減させる規格を作るのです。規格化の動きがはじまれば、各社、研究室レベルの技術の実用化が早まり、規格が決まる頃には、製品の実用化がはじまるだろうという考えです。

 これらの2つの新しいモバイルメモリの規格は、現在「LPDDR3」と「Wide IO」と呼ばれています。

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