BMWのEVとドリームライナーの共通点は炭素繊維強化樹脂、リサイクル技術で協業へ:材料技術
自動車分野での量産採用が始まりつつある炭素繊維強化樹脂(CFRP)。2013年後半に発売する電気自動車(EV)「BMW i3」のコックピットにCFRPを採用するBMWは、同様に「B787ドリームライナー」の機体の大部分をCFRPで製造しているボーイングと、CFRPのリサイクル技術で提携する。
炭素繊維強化樹脂(CFRP)は、アルミや鉄といった金属以上の強度と、樹脂系材料であることによる軽量性を備えた素材である。ゴルフクラブ、テニスラケット、釣り竿などに広く利用されている。
最近では、Boeing(ボーイング)の「B787ドリームライナー」や、フランスのAirbus(エアバス)の「A380」といった最新鋭の航空機が、機体の著しい軽量化のためにCFRPの利用比率を大幅に高めている。
一方、自動車分野では、原料の炭素繊維が高価である上に、大型の部品をCFRPで量産する技術が整備されていなかったため、レースカーや一部の高級車を除いて採用されている事例はほとんどない。
EVとPHEVのコックピットにCFRPを採用
自動車メーカーの中でもCFRPの採用に積極的なのがBMWである。同社は、2013年後半に発売する電気自動車(EV)「BMW i3」と、2014年に発売するプラグインハイブリッド車(PHEV)「BMW i8」のコックピットをCFRP製にする方針を明らかにしている。そして、ドイツのSGLグループと設立した、ドイツと米国の合弁工場で炭素繊維を量産する準備を進めている。
さらにBMWは2012年12月12日(米国時間)、ボーイングと炭素繊維のリサイクル技術を共同研究することで合意した。さらに、炭素繊維製造プロセスのシミュレーションやオートメーション化のアイデアに関する情報も共有する。
現在、CFRPを用いた製品を開発する上で課題となっているのが、製造段階で発生する大量の廃材や最終製品を廃棄する際の対応である。特に、航空機の機体や、自動車のコックピットともなると、処理すべきCFRPの量は膨大であり、これらをリサイクルする技術が重要になってくる(関連記事)。
BMWは、「共同研究を通じて、両社は航空業界と自動車業界のノウハウを融合し、CFRPを使った持続可能な生産を実現できるようになる」と述べている。
ボーイングも、「今回の合意は、炭素繊維の利用および最終用途を促進・開拓する上で極めて重要な一歩になる。炭素繊維で作られた製品は最終的な廃棄に関する計画を策定しておかなければならないが、ボーイングとしてはリサイクルによって新しい製品に活用する方法を模索したいと考えている。BMWとの提携は、その目的を達成する上で役立つ」とコメントしている。
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