比較映像から理解を深める、自動車用ESCと二輪車用ABSの効果:あの小寺信良がモータージャーナリストに転身!?(2/2 ページ)
交通事故を予防する上で効果を発揮する、自動車用のESC(横滑り防止装置)と二輪車用のABS(アンチロックブレーキシステム)。その機能と効果について、映像ジャーナリストとして知られる小寺信良氏の体験リポートをお送りしよう。小寺氏が撮影した試乗中の映像にも注目だ。
ESCより普及が遅れている二輪車用ABS
自動車用のESC以上に、日本国内での普及が進んでいないのが、二輪車用のABSである。日本では、排気量250cc以上の二輪車でABSの装備率はまだ20%程度しかなく、250cc未満での装着率に至っては数%にすぎない。
法制化に関しても、欧州で125cc以上に対してのみ、2016年から義務化が決定しているが、それ以下の排気量に関しては協議中となっている。日本や北米では、まだ法制化までには至っていないのが現状である。
二輪車のABSは、自動車と同様に、制動距離の短縮というメリットがある他、後輪の浮き上がりによる転倒リスク軽減、凍結路面での横滑り防止といった効果がある。
二輪車のABSについても、摩擦係数の低い路面条件でテスト走行した際に、その有無によって二輪車の挙動がどのように変わるのかを撮影することができた。
テスト走行では、転倒防止用のガードを装着しているものの、ABSがない場合には横滑りや転倒のリスクが高いことが分かる。特に二輪車の場合、転倒すればライダーは大きなけがを負いやすい。安全に停止できるシステムの必然性は、乗り手が一番よく理解していることだろう。
二輪車用ABSは、1994年の第1世代では重量が4.5kgもあったが、現在は第9世代まで改良が進み、最軽量のモデルで700gにまで軽量化されている。サイズも、ミラーレスの一眼レフデジタルカメラ程度に収められている。
自動車用のESCや二輪車用のABSは、事故を未然に防ぐ技術として、本格的な普及が期待されている。実際に効果を発揮している状況は把握しづらいものだが、今回のテストコースでの走行映像から、その重要性をご理解いただけるのではないだろうか。
筆者紹介
小寺信良(こでら のぶよし)
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
Twitterアカウントは@Nob_Kodera
近著:「USTREAMがメディアを変える」(ちくま新書)
関連記事
- 最新センサーデバイスが変える予防安全システム
地球温暖化による気候変動や、原油の高騰に起因するガソリンの値上がりなどにより、現時点における自動車の新技術開発の方向性は、CO2削減や燃費向上につながる“エコカー”に注目が集まっている。しかし、1トン以上の重量で高速走行する自動車にとって、事故回避や事故の被害を低減するための安全システムも、エコカーと同じく重要な技術開発項目である。そして、安全システムのキーデバイスといえるのが、人間の見る、感じるための感覚器官に相当するセンサーである。 - ダウンサイジング過給の「N-ONE Tourer」、競合の軽ターボを上回るトルク性能
ホンダの軽自動車「Nシリーズ」の第3弾「N-ONE」のターボチャージャ搭載車種である「N-ONE Tourer」は、「ダウンサイジング過給」を取り入れている。競合車種となるスズキの「ワゴンR スティングレー」、ダイハツ工業の「ムーヴ カスタム」と比較した。 - グローバル企業として生き残るには――ボッシュ栃木工場に見るニッポンクオリティ
自動車の品質とコストを支えているのは誰か。多くの部分を下支えしているのが部品メーカーだ。自動車部品メーカーの1つ、ボッシュ。その栃木工場の工夫を、小寺信良氏の目を通して語っていただいた。品質向上への努力とはどのようなものなのかが分かるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.