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第2回 IBISの新動向前田真一の最新実装技術あれこれ塾(2/3 ページ)

実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第2回テーマは「IBIS」。最近のIBISが決めた標準化とIBIS-ISSについて紹介する。

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2.IBISのパッケージ、配線モデル

 IBISモデルは、IOモデル定義とパッケージモデル定義の2つの大きなモデル定義からなっています。

 IBIS規格の制定当初、IBISモデルはIOモデルと呼ばれるICのドライバ、レシーバのモデル化に力を注いでいました。パッケージモデルと呼ばれるICパッケージの配線モデルについては簡単なR、L、C、各1個のモデルでしか定義しませんでした(図3)。これは、100MHz以下の信号では、パッケージ内配線は充分に短く、集中定数回路として扱っても解析精度に影響が生じないためです。

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図3 R、L、C一段モデル
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図3-2 IBISのパッケージ定義例(IBIS規格より抜粋)

 しかし、信号が高速化すると同時にICパッケージが大型化し、ICパッケージ内の配線が長くなったことで、パッケージ内配線も、伝送線路として考慮したり、集中定数回路として扱う場合でもより精度の高いモデル化が必要となってきました。

 現在、多くの意見として、IBISモデルが、高速信号の解析に対して精度が良くないといわれている原因のひとつはこのパッケージモデルにあります。 もちろん、IBIS側でもこの問題は早くから理解していて、パッケージモデルの精度向上の改良を何回か規格化しました。

 バージョン3からオプション定義として[PackageModel]の定義を追加や、EBD(Electrical Board Description)定義、IBISとは別のモデル定義として、ICM(IBIS Interconnect Modeling Specification)の制定など、パッケージモデル定義の精度向上に努めています(図4)。

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図4 ICM規格

 しかしこれらの定義は、自由度を上げるために、定義にSパラメータや、マトリックス定義、配線の物理的定義などの複数の定義が可能となっており、混乱をきたしました。特に、シミュレータではどの表現に対応するのか、すべてに対応するのか、対応が困難となりました。また、このような定義は、多くのネット間の結合をマトリックスで定義したり、配線の情報を全て文字で定義するなど、ファイルサイズの増大と、配線情報の漏洩につながります。このため、シミュレータの対応が不十分であったりして、充分には普及しませんでした。

 現在、一部のDDRのDIMモジュール(図5)のIBISモデルにEBDによる配線モデル定義が使われています。しかし、このような標準モジュール以外のパッケージやモジュールの定義は、いぜん、簡単なR、L、C、各1個のモデルの定義が大多数を占めています。

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図5 DIMMモジュール(Samsung電子)
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図5-2DIMMモジュールのEBD定義(Elpidaのモデルから抜粋)

3.Sパラメータ定義

 IBISのパッケージモデル定義をはじめ、コンデンサやコネクタの解析モデルとしてよく使われる特性定義フォーマットとしてSパラメータがあります。

 Sパラメータは、高周波回路では、半導体などの特性定義に使われており、高周波回路解析には、実績のあるモデルフォーマットです。IBISモデルと同様に内部回路をブラックボックスとして扱い、入出力の特性だけを定義するもので(図6)、内部の回路が秘匿され、またIBISの思想と一致しているため、IBISとの相性の良い定義になっています。

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図6 IBISとSパラメータ

 Sパラメータは信号の周波数ごとに特性を定義するフォーマットになっています(図7)。このため、周波数に応じて配線の特性が変化する損失のある伝送線路の解析に対して、精度の高い解析が行えます(図8)。

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図7 Sパラメータの周波数ごとの定義(Touchstone File Format Specification Version2より)
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図8 損失のある伝送線路

 このSパラメータはAgilent社が開発したタッチストーン(Touchstone)と呼ばれるフォーマットが標準フォーマットとして流通しています。IBIS委員会ではAgilent社の同意の下にタッチストーンフォーマットのバージョンアップを行いバージョン2.0はIBISでフォーマットを作成しました(図9)。

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図9 タッチストーンVer2規格

 このように、IBISでは、関連フォーマットの標準化に積極的に取り組みを行うようになってきました。その新しい規格化の動きがIBIS-ISSです。

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