ホンダの新型ハイブリッドシステムはDCTが肝? 「IMA」より燃費を30%向上:エコカー技術
ホンダは、小型車向けに新たな1モーターのハイブリッドシステム「SPORT HYBRID Intelligent Dual Clutch Drive(i-DCD)」を開発した。現行の「フィット ハイブリッド」などに搭載されている「IMA」と比べて燃費を30%以上向上できるという。同社の4輪車で初となるデュアルクラッチトランスミッション(DCT)の採用にも注目だ。
ホンダは2012年11月13日、小型車向けに新たなハイブリッド(HEV)システム「SPORT HYBRID Intelligent Dual Clutch Drive(i-DCD)」を開発したと発表した。現行の「フィット ハイブリッド」などに搭載されている「IMA」と同様に、モーターを1個用いた軽量・小型のHEVシステムだが、IMAと比べて燃費を30%以上、加速性能を15%以上向上できるという。2013年にフルモデルチェンジを予定している「フィット」に採用される見込みだ。
エンジンとモーターをクラッチで接続
i-DCDは、新たに開発した排気量1.5l(リットル)の直列4気筒アトキンソンサイクルエンジンと、出力20kW以上のモーターを内蔵した7速のデュアルクラッチトランスミッション(DCT)、高出力・大容量のリチウムイオン電池パックから構成されている。
エンジンとモーターはクラッチで接続されており、走行状況に応じて接続と切り離しの切り替えが可能である。加速時や高速走行時にはクラッチを接続し、エンジンとモーター、両方のトルクを走行に生かせる。一方、発進時や低・中速走行時にはクラッチを切り離して、モーターだけで走行する。クラッチの切り離しは減速時にも行われ、ブレーキエネルギーを効率よく回生できるという。
これに対して現行のIMAは、エンジンとモーターを直結しており、出力10〜15kWのモーターを使って、発進時や低・中速からの加速時にエンジンの動作をアシストすることに主眼を置いている。エンジンに気筒休止システムを搭載している車両であれば、低速時にモーターだけで走行することも可能だが、あまり効率が高いとは言えなかった。
i-DCDは、エンジンとモーターの間にクラッチを挟むことで、エンジンとモーターの直結によって発生していた効率低下というIMAの課題を克服した。さらに、モーターの出力を20kW以上に高めているので、モーターだけでも一定レベルの走行性能を実現できるようだ。
ホンダ四輪車初のDCT採用
i-DCDでもう1つ注目すべき点は、7速DCTの採用である。ホンダは、二輪車向けでは世界初のDCTを開発しているが、四輪車では今回が初採用となる。
DCTは、クラッチペダルを使わずに変速を行えるトランスミッションの1種である。日本市場では、自動変速機(AT)や無段変速機(CVT)が一般的だが、より良好な燃費を実現できるとして欧州市場では採用が広がっている。
i-DCDがうたう従来比30%以上の燃費向上には、この7速DCTも貢献しているとみられる。7速DCTを通常の内燃機関車に搭載する可能性については、「現時点ではハイブリッドシステム向けの展開を予定している」(同社)という。
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