検索
連載

エコカーとともに進化する鉛バッテリーいまさら聞けない 電装部品入門(2)(3/3 ページ)

代表的な電装部品の1つとして知られている鉛バッテリー。今回は、前回に引き続き、鉛バッテリーをさらに深く掘り下げる。充電制御機能やアイドルストップ機能など、最近のエコカーに搭載されているシステムへの対応についても紹介しよう。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

鉛バッテリーからの脱却の可能性

 充電制御機能やアイドルストップ機能への対応は、自動車には鉛バッテリーを使用するという前提を基にした工夫です。しかし、自動車へのリチウムイオン電池の採用事例も増えてきたので、「鉛バッテリーからの脱却」も現実的な選択になってきました。

 最近よく耳にするリチウムイオン電池は、既にハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)に採用されていますが、通常の乗用車(トラック含む)には(私が知る限り)採用されていません。ただし、スズキが2012年9月に発表した新型「ワゴンR」は、補助バッテリーとしてリチウムイオン電池を採用しています(関連記事)。

新型「ワゴンR」のブレーキ回生システム「ENE-CHARGE」
新型「ワゴンR」のブレーキ回生システム「ENE-CHARGE」は、鉛バッテリーとともにリチウムイオン電池も用いる。左は減速時、右は走行時の動作イメージである。(クリックで拡大) 出典:スズキ

 個人的にも「早く採用すればいいのに……」などと安易に考えたこともありますが、採用したい気持ちは開発側も同じでしょう。しかし、採用できないというのが現状なのではないでしょうか。

 リチウムイオン電池は、非常に細やかな充電制御を行わなければ、内部構造が破壊されて異常発熱を引き起こしてしまいます。最悪の場合は破裂・発火に至ることもあってか、安全性の確保に重点を置いて製品開発が進められてきました。特に自動車の場合は、衝突事故を代表例とした大きな外力が加わる事態も想定しなければいけません。

 つまり、リチウムイオン電池を自動車に搭載するためには、かなり大掛かりな電池管理システムを組み込む必要があります。このため、HEVやEVのように電力が主エネルギー源となる車両でなければ、大掛かりな電池管理システムによるコスト上昇は容認できません。一般的な内燃機関車に、バッテリーとしてリチウムイオン電池を搭載するメリットよりも、それに掛かるコスト上昇によるデメリットの方が大きいというのが現状です。

 リチウムイオン電池をバッテリーとして本格的に採用するまでに越えなければいけない壁はまだ多くあります。しかし、EVの行く末は、リチウムイオン電池の性能向上が全てを握っていると言っても過言ではありません。言い方を換えれば、今後の自動車業界の成長は、リチウムイオン電池をはじめとするバッテリーの進化次第とも言えます。今後の自動車用バッテリーの開発動向に注目しましょう。


 次回は「オルタネータ」について紹介します。お楽しみに!

プロフィール

カーライフプロデューサー テル

1981年生まれ。自動車整備専門学校を卒業後、二輪サービスマニュアル作成、完成検査員(テストドライバー)、スポーツカーのスペシャル整備チーフメカニックを経て、現在は難問修理や車両検証、技術伝承などに特化した業務に就いている。学生時代から鈴鹿8時間耐久ロードレースのメカニックとして参戦もしている。Webサイト「カーライフサポートネット」では、自動車の維持費削減を目標にしたメールマガジン「マイカーを持つ人におくる、☆脱しろうと☆ のススメ」との連動により、自動車の基礎知識やメンテナンス方法などを幅広く公開している。



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る