いまさら聞けない SDメモリーカード入門:メモリーカード 技術解説(1/3 ページ)
あなたはどれくらい「SDメモリーカード」のことを知っているだろうか? SD規格やSDホストコントローラの仕組みについて、人に正しく説明することができるだろうか? 携帯電話やスマートフォン、デジタルカメラに代表される身近な機器に必ずといってよいほど使われているSDメモリーカードの基礎を解説する。
携帯電話やスマートフォン、デジタルカメラやゲーム機など、私たちの身の回りにある、さまざま機器で「SDメモリーカード」が使われています。
具体的には、電話帳の内容や写真・音楽・動画といったマルチメディアコンテンツ、ゲームデータなどの保存や管理に活用されています。
SDメモリーカードってどういうもの?
では、ここで質問です。皆さんは、SDメモリーカードのことをどれくらい理解していますか? 人に正しく説明することができますか?
- SD、SDHC、SDXC……。一体、何が違うの?
- 種類があり過ぎて、どれを使ったらいいのか分からない……
- そもそもSDメモリーカードって、一体どんな仕組みなの?
いかがでしょう。普段使用している割に「よく分からない」という方もたくさんいらっしゃると思います。
筆者は、SDメモリーカードを制御する装置(SDホストコントローラ)を開発しています。その経験から皆さんに、SDメモリーカードに関する“いまさら聞けないこと”を“分かりやすく”説明したいと思います。日ごろからSDメモリーカードを活用している人も、あまり使ったことのない人も、ぜひ、本稿をきっかけにその理解を深めてみてください。
SD規格とSDアソシエーション
USBメモリ、コンパクトフラッシュ、メモリースティックなど、データ保存の規格に基づいた、さまざまな小型記憶媒体(メモリーカード)が存在します。その中の1つが本稿の主役であるSDメモリーカードです。
SDメモリーカードは、一般的に「SDカード」と呼ばれています。東芝、SanDisk、パナソニック(旧:松下電器産業)の3社によって共同開発された規格で、他のフラッシュメモリーカードと比較しても、圧倒的なシェアを誇っています(台数ベースで86.8%[2009年調べ]というデータがあります)。
SD規格の策定は、「SDアソシエーション(SD Association)」という規格団体が行っています。現在、SDアソシエーションには、約1000社の会員企業が参加し、SD規格の設計と開発に当たっています。SDメモリーカードを利用する製品を製造・販売するには、まずSDアソシエーションの会員にならなくてはなりません。会員になるとSD規格書を入手することができます。さらに、SDアソシエーションの会員サイトにアクセスできるようになり、現在検討中の規格の進ちょく状況を把握することも可能になります。
SDの語源、ロゴについて
「SD」は“Secure Digital”の略であるといわれていますが、はっきりとした裏付けはないようです。SDメモリーカードは、基本的に「マルチメディアカード(MMC:Multi Media Card)」を発展させ、著作権保護機能を搭載したものです。この著作権保護機能から“Secure”の「S」が名称に付けられたともいわれています。
一方、SDメモリーカードのロゴは、1990年代前半に東芝が開発した光ディスク「Super Density Disc(略称:SD)」のために用意されていたロゴデザインを転用したといわれています。SDメモリーカードのロゴを見て「光ディスクのイメージっぽいな……」と感じたことはないでしょうか。どうもロゴの「D」の部分のデザインは、Super Density Discに由来する光ディスクをイメージした図案のようです。
いかがでしょうか。「SD」の語源やロゴについて、今回初めて知った方も多かったのではないでしょうか。
SDメモリーカードの用途、種類
次に、SDメモリーカードの種類について見ていきましょう。“容量”を示す名称として以下の3種類が存在します(表1)。
SD名称 | 記憶容量 |
---|---|
SD | <2Gバイト |
SDHC:SD High Capacity | 4/8/16/32Gバイト |
SDXC:SD eXtended Capacity | 32Gバイト<〜≦2Tバイト |
表1 SDの名称と記憶容量 (出典:SD Specifications Part 1 Physical Layer Simplified Specification Version 3.01より) |
容量とは別に、転送速度を示す名称として“スピードクラス”があります(表2)。
スピードクラス | 最低保証転送速度(※) |
---|---|
Class 0 | 未定義 |
Class 2 | 2Mバイト/秒以上 |
Class 4 | 4Mバイト/秒以上 |
Class 6 | 6Mバイト/秒以上 |
Class 10 | 10Mバイト/秒以上 |
表2 スピードクラス (※)一定の測定条件による (出典:SD Specifications Part 1 Physical Layer Simplified Specification Version 3.01より) |
さらに、“転送モード”を示す名称として以下の3つがあります(表3)。
データ転送モード | 最大転送速度 |
---|---|
DS:Default Speed | 12.5Mバイト/秒 |
HS:High Speed | 25Mバイト/秒 |
UHS-I:Ultra High Speed1 | 104Mバイト/秒 |
表3 データ転送モードと最大転送速度 (出典:SD Specifications Part 1 Physical Layer Simplified Specification Version 3.01より) |
また、カードの大きさも3種類あります(表4)。
カードの形状 | 端子数 |
---|---|
SDメモリーカード | 9ピン |
miniSDカード | 11ピン |
microSDカード | 8ピン |
表4 カード形状種類と端子数 ※miniSD/microSDはアダプターを使用することでSDメモリーカードとして利用できる |
購入する際、SDの名称(SD/SDHC/SDXC)をあまり気にせずに、容量だけを見て選ぶ人も多いのではないでしょうか。SDメモリーカードは、表1、表2に示した通り、記憶容量とスピードクラスの規格が独立して決められていますので、同じ記憶容量でも転送速度が異なるものがあります。さらに、最近では「UHS-I」という新しい規格のSDメモリーカードも発売されていますし、カード形状が異なるものもあります。
SDメモリーカードは大容量化、高速化が進んでいます。さまざまな種類のSDメモリーカードが販売されていますので、利用する機器の仕様に合ったカードを選びましょう。
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