SiCデバイスを使えばどこまで小型化できるのか、ロームとアルプス電気が示唆:CEATEC 2012(2/2 ページ)
電力変換回路の消費電力低減や小型化、軽量化が可能なSiC(シリコンカーバイド)デバイス。「CEATEC JAPAN 2012」におけるロームとアルプス電気の展示から、SiCデバイスによる小型化の方向性が見えてきた。
SiCデバイスでリアクトルも小型に
SiCデバイスを用いたパワーモジュールは、電力変換回路のスイッチング周波数を大幅に高められるという特徴がある。スイッチング周波数を高められれば、回路に使用するトランスやリアクトルを大幅に小型化できる。
アルプス電気は、SiCパワーモジュールの採用によりスイッチング周波数を高めた双方向DC-DCコンバータに利用できる、新開発のリアクトルや電流センサーを展示した。双方向DC-DCコンバータは、定置型蓄電池システムや太陽光発電システムのパワーコンディショナ、HEVのDC-DCコンバータ、EV用充電器などに用いられている電力変換回路である。
新開発のリアクトルのコアには、アルプス電気と東北大学が共同開発した金属ガラス材料「リカロイ」を採用している。リカロイは、一般的なリアクトルのコアに用いられているケイ素鋼板と比べて、磁気損失が極めて小さい。SiCデバイスの採用によって小型化できるリアクトルのコアを、ケイ素鋼板からリカロイに置き換えれば、さらに変換効率を高められるという狙いがある。
展示では、出力2kWの双方向DC-DCコンバータに必要になる部品について、シリコンデバイスのパワーモジュールやケイ素鋼板コアのリアクトルを使う従来品、SiCパワーモジュールでスイッチング周波数を高め、リカロイコアのリアクトルを採用する現行開発品、さらに性能を向上したSiCパワーモジュールとリカロイコアのリアクトルを採用する次世代品の3つに分けて紹介した。スイッチング周波数は、従来品が15kHz、現行開発品が100kHz、次世代品が200kHzである。なお、SiCパワーモジュールはロームの製品を使用している。
アルプス電気のSiCパワーモジュールを用いた双方向DC-DCコンバータの比較展示。右から、従来品、現行開発品、次世代品向けの、小型化したリアクトルや電流センサーが並べられている。現行開発品、次世代品については、ロームのSiCパワーモジュールも展示されていた。(クリックで拡大)
リアクトルの体積/重量/鉄損を比較すると、従来品が962cm3/5.4kg(kgf)/1500kW/cm3、現行開発品が236cm3/1.5kg(kgf)/500kW/cm3、次世代品が165cm3/1.1kg(kgf)/350kW/cm3となっており、大幅な小型化、軽量化、損失低減を実現できることが分かる。
リアクトルとパワーモジュール間の電流を計測する電流センサーについても、小型化が可能だという方向性を示した。従来、こういった大電流を計測する電流センサーは、磁気コアを持つ比較的サイズの大きい製品が多かった。アルプス電気が開発中の製品は、磁気コアを省きながら計測精度を維持している。電流センサーの体積についてリアクトルと同様の比較を行うと、従来品が21cm3であるのに対して、現行開発品は3cm3、次世代品に至っては0.1cm3まで小型化できるとしている。
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